税理士 岸野康之 事務所

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税理士 岸野康之 事務所のブログ 一覧

社会医療法人(1)概要と認定状況

コロナワクチンの流通等については、上流では国が仕入を取り仕切っているが、中流、下流部分でどのように流通するかはあまり決まっていない感じだ。

 

ある医師会の先生は、地域医師会によって動きが違うという。

ある理事長は、急性期病院を筆頭にすでに供給経路や順序は定まっているという。

はたまた、そもそも上流からどこにワクチンが流通するか、何本入るのか、国も誰も実は把握できていないという話もある・・・

 

ともかく急性期から慢性期、クリニックまで、医療従事者全員のワクチン接種が、僕は優先課題だと思う。

この1年、多くの事業者や個人が「ワクチンさえ来れば。。。」という祈りに似た自粛と移動制限を余儀なくされている。

その自粛等の音頭を取る医療関係者、医師会関係者の、感染不安を取り除くことが第一で、あとの問題は後から考えるしかないと愚考する。

 

 

ところで今日はお邪魔した法人で、久しぶりに「社会医療法人」の話題で盛り上がった。

これだけネット情報が行き渡っても、表に出ない話はまだあるものだ・・・

 

【社会医療法人 認定件数】

 

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000593240.pdf

 

250法人移行は伸びないかと思いきや、まだジワジワと増えている。

 

社会医療法人は、平成19年4月に誕生した非課税の医療法人。

当時の「官民・イコールフッティング」の考え方のもと、公的病院が凋落する中で、国が地域医療を守る民間病院に対して、非課税の恩恵をもたらしたものだ。

 

メリットはやはり本来業務等の法人税非課税、固定資産税ほか地方税の非課税、収益業務の実施可能、そして出資持分を有する医療法人においては無税による出資放棄、などだろう。

 

一方、デメリット(面倒くささ)は救急確保等医療の「量」的遵守、毎期の社会医療法人事業報告の提出・閲覧義務、法定監査義務、公益的ガバナンス確保の義務など。。。

 

デメリットの中の大きな一つは、「社会医療法人を取り消した場合、社会医療法人成りしてから今日までの『課税所得相当分に対する』法人税を、遡って納める義務がある」という、法人税法による厳しい取り決めだろう。

 

そして今日、花が咲いた話題はこの遡り課税、だった。

 

明日は、この遡り課税の法条文について確認してみたい。

 

岸野康之 拝 (本日重量 86.9㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

 

電子申告の世界と

昨日、申告を手伝っている友人から、確定申告について質問があった。

「65万円控除には、電子申告と電子保存が必要なの?」

 

僕は、全ての確定申告を電子申告しているので当然のことと思い、細かいアナウンスをしていなかった。

この質問の件の法改正は、65万円控除を受けたければ、電子申告か電子保存のいずれかしなさいよ、というものだった。

こういう質問をもらえるというのは、本当にありがたい。

来年からは全ての申告クライアントに、簡単な改正内容をアナウンスしよう。

 

ところで電子申告はかなり普及してきたが、ここで国はさらに電子申告を推進している。

令和2年度分から、大企業等は「電子申告の義務化」となり、実は小さな当事務所にも一件「義務対象」のクライアントがいる関係で、それ向けの環境整備を行った。

相続税も電子申告開始となり、早い事務所では電子申告対応を開始している。

上記の青色申告特別控除65万円(紙だと55万円)などは、電子申告に初めて具体的なインセンティブを付けたのでないか。

かつてもカードリーダーを買ったお金の還付があったが、それは5000円程度で、あまり意味をなさなかった。

houjin_e-tax_r02のサムネイル

コロナの影響で、電子申告可能な時間帯も長くなった。そもそも申告期限自体も延びているし。

できるんならもっと早くやってよ、という感じだが、とにかく便利になった。

 

いまは、70歳以下の現役世代対応の税理士は、ほとんどが電子申告でないだろうか。

当事務所でも、修正、更正が絡むものや特殊事案以外は、すべて電子になっている。

 

 

僕が会計の世界に入る平成16年頃に、e-taxが運用開始されたが、僕自身は最初の6、7年くらいは、紙で申告書を出していた。事務所があまり対応していなかったことと、クライアントの多くが「電子は、本当に大丈夫なのか??」と疑心暗鬼であったこと、が理由である。

 

その後、電子申告をやってみると、こんなに便利なものはない。

何しろ、あるクライアントは10か所の自治体に申告書を出す、となると、10の封筒を用意して、さらに10の返信用封筒を用意して、控を印刷して、事務所の印鑑を押して、先方のトップの日程を押さえて、目の前で印鑑をもらって、期限内に郵便局に駆け込んで・・・

 

というプロセスが、不要になった。手元でぽぽぽぽーん! もうやめられへん。

 

昔は「押印のプロセス」が無くなったら、経営者たちとゆっくり話す機会が減り、付き合いに影響が出ないか心配した。しかし、むしろ他のサービスや経営の話をたくさんできるようになり、そんな心配は杞憂だった。

日頃からよく話していれば、納税時に改めて話す税の話題はあまりない、というのは、当り前だが重要な発見だ。

 

一方で事務所の職員には、申告書ではない「届出書」などは、しばらく郵送で出してもらうようにしている。

僕自身、「このパソコンが止まったら」「たまたまネットが落ちたら」など考えてしまう、途方のない臆病者だから、自分がペーパー手続ができることに、大変な安心感を持っている。

だから、この郵送で物事が動く手続は、知っていた方が良い気がするのだ。

 

同じような話で、記帳代行を主業にするには時代が違うと思うが、記帳事案を0件に近付けてしまうと、新しい職員は記帳を知る機会を逸することになろう。

自ら記帳を組成できない会計人は、応用もできない。それは、医療会計で有名な青木恵一先生も指摘しており、全く同意。

僕自身も修業期に、売上数十億の部門別会計を一人で記帳代行していた経験が、いま法人の経理指導に、大変役立っている。

 

どれだけ電子社会が深く固く成立しても、その成り立ち、プロセス、仕組みの、視覚や触覚による把握は必要なことだ。

それは決して、僕が古い漢(おとこ)だから考えることではない、と思う。

 

と、少し横道にそれたが、ともかく電子の時代。

ただし「ラクになった」で終わらせたら、僕らはAIの手下になるかも知れない。

空いた時間で何を提供するか、どう動くか。

 

これから深まる電子社会の中で、我々も、多くのビジネスマンも、より深く真価が問われることとなる。

 

岸野康之 拝  (本日重量 87.1㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

医療機関の開設主体

いよいよ一部医療者から、ワクチン接種が開始された。

ワクチンの接種順序は難しい問題だが、医療機関でコロナ対応する人たちには、まず行き亘ってほしいものだ。

 

そう、医療機関。

まず医療機関は、法律上「20床以上を有する『病院』」、「0床~19床の『クリニック(診療所)』」に大別される。

医療、医療機関と言ったときに、病院と診療所のどちらを指しているのかが、常に最初に気になる点だ。

僕が10年いた前職場のクライアントはベッドがある病院が中心で、それを指して医療専門という感じがしていた。が、様々な方と話をしていると、医療専門と言うとクリニックや医師個人などを中心に、実務をするイメージを持つ方が多いようである。

ちなみに、開業して現在の僕のクライアントは、どちらもいらっしゃる。

 

さて、病院とクリニックを大別した後は、今度は「開設主体」は何か、ということになる。

開設主体とは、下の表のように「国立?市立?学校法人立?医療法人立?個人立?」などという、設置母体の種類を指す。

医療機関の開設主体のサムネイル

普通は税理士が取り扱うのは、医療法人が中心となる。

僕自身はかなり特殊な修業をしてきたので、上記表でいえば

「都道府県、市町村、地方独立行政法人、公益法人」

のお客様もいらっしゃって、仕事の内容は様々だ。さて、それはともかく・・・

 

日本の医療は、戦後に医療環境が超不足した時代に、少しでも国民の福利厚生を高めるために、国が作って、自治体に作らせて、ほか民間人たちに作らせて・・・

とにかく、一人でも多くが医療にかかれるように医療機関を増やしてきた。

その結果、現在となっては医療機関が「偏在」する地域が増える現象が出てきている。

 

ある地域では、似た公立病院と民間病院がしのぎを削り、ある地域では人口が多いのに、医療機関が全然存在しない。別の都市部では、たくさんあると思ったら夜は閉院のクリニックが多く、急な病気を診れるところがない。などなど・・・

 

先日、国立(くにたち)国分寺エリアが得意な職員が、「街に大きい病院がない」と言う。

文教都市に大きい病院がないはずがない、地図に「国立(こくりつ)病院」があるじゃないか、と言ったら。

それは「こくりつ病院」でなく「医療法人のくにたち病院」です、と。失礼・・・

そう、人口が多いから病院があるとは限らないし、実は「誰も適切に医療機関を配置していない」のが医療の世界。

 

 

と、少し横道にそれたが、ともかく「医療機関」と聞いたら。

ベッドがあるかないか。

開設主体はどこなのか。

それを確認するところから仕事も、茶飲み話も始まるのが、僕らの世界である。

 

僕は、開設主体の話が本当に好きで、愛してやまないのだけど。

またそれは、別の機会にお話したいと思う。

 

今週は2月業務の山場。引き続き体調に気を付けて、頑張りましょう。

 

岸野康之 拝((本日重量 87.2㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

財務指標を見るときに

福祉医療機構(WAM)が出した2019年度の決算分析が出ていた。

表面を見たところ、一般病院の利益率は苦戦していて、療養型病院の業績はやや上向きで堅調、という内容だ。

 

「一般病院の医業収益対医業利益率は前年度から 0.6 ポイント低下し 1.2%であった。療養型病院は前年度から 0.5 ポイント上昇し 5.7%、精神科病院は 1.2 ポイント低下し 1.7%であった。いずれの病院類型でも 2019 年 10 月の消費税増税に伴う報酬改定などを受け患者 1 人 1 日当たり入院医療収益は増加していたが、一般病院と精神科病院では人件費などの費用の増加が収入の増加を上回っていた。」

 

https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/210219_No009.pdf

 

つまり、病院全体は増税改定で収入が増えたが一般と精神科は人件費の伸びが大きく、苦戦したということである。

業界のトレンドを読む上では、こういう財務統計はとても役立つ。

 

ところが、こうした統計から読めるトレンドは、個別病院の業績を読む上で参考にすることはあっても、「全体がこうなので、この病院も同じ傾向です」とは、当てはめることはできない。医療統計を読む時には、いくつか気を付けたい点がある。

 

まず、今回の福祉医療機構の統計は約80%が普通の民間医療法人、残る20%程度が非課税の法人などで占めている。普通の民間医療法人とは、企業と同じく税金を納める医療法人だから、赤字続きでは倒産してしまうが、大黒字を出して納税するよりは、当然節税や再投資による利益圧縮を目指すバイアスは働く。一方、同じ民間でも非課税の法人は、利益に課税されないので、遠慮なく利益を計上できる。

医療の財務統計は、一般の中小企業統計などより精度は高いが、上場企業の統計のように「みんなが黒字を目指す(黒字が善)」前提にあるわけではない、ということだ。

 

ところで、この統計には載ってこない国立、公立などはどうかといえば、同じ医療機関でも「赤字補填の補助金」にあたるものがある。基本的に、民間には設備投資等の補助金以外は出ない(それもほとんど出ない)。しかも公立病院などは、補助金的なものを受領しても、大半が赤字続きという状況だ。

だから、国公立と民間が同じ「病院」として混ざった統計を見るときは、中には大黒字で資本蓄積が進んでいる団体と、非課税で多額の補助金を得てもなお赤字の団体の、いずれもが含まれているということに、留意したほうが良い。

 

こういう「国立」「公立」「医療法人」「学校法人」など、開設している団体が異なることを、『開設主体の違い』と呼んでいる

かねてより日本の医療界では様々な課題が議論されているが、僕は、この開設主体の垣根をある程度取り払えれば、制度的課題の大半は解決できるのでないか、と思っている。

 

 

次回は、開設主体について、少し取り上げてみたいと思う。

 

岸野康之 拝 (本日重量 88.0㎏   2021年2月21日 着衣89.3㎏)

法令の種類と 通知行政

新聞で次のような記事が掲載されていた。

「コロナ対策『通知行政』の壁  ~検査・接種で年900件、自治体・病院の混乱要因に~」

その見出しとともに掲載された次の表が、目を引いた。

法令の種類のサムネイルへー、と思いながら見ていた。

新聞的な定義付けだな、それちょっと違わないか? とか思いながら、様々な実務的な雑感が湧いた。

全体としておさらいして、とても再確認の勉強になった。

税務と医療経営を取扱う立場から、以下に私見を記してみたい。

 

【憲法】

税理士や医療行政の実務で、憲法など最高規範が登場する場面があるのか?と問うたときに。

僕が真っ先に思い浮かべるのが「財産権」の議論だ。

会社法、税法、ほかあらゆる実務法規が許容しても、財産権を侵されている人がいる可能性というのは、絶えず付きまとう。

僕は侵していなくても、誰も侵していなくても、財産権を侵害されたと認識する人がいたら、それは焦点になりうる。

この辺りの話は、いずれ取り組んでいきたいところだ。

 

【法律・政令・省令】

税法の仕事をしていると、まず当然、税法本文に入る。

そしてそのことを政令・省令で詳説しているから、税法と政令・省令は実務上ワンセットだ。

税法以外の法律も、「法体系」という言い方をしたときには、「法・施行令・施行規則」がセットとなって、実務的意味を形成することが非常に多い。

かつてヘリコプターの仕事をしたときも、「航空法」で解決しない課題は、「航空法施行令・施行規則」まで入っていくと解決した。

日頃扱わない法律も読む訓練をさせられた時期があった。

あの時は、法律を勉強していてよかった、と心底思ったものだ。

だから、新聞記事の拘束力〇・△の記載は、最後に裁判でガチバトルした時にはそうかもしれないが、実務上は「法令政令省令は全部〇」というのが、僕の実務実感である。

 

【通達】

税理士として税法を扱うとき、「通達」の位置付けが重要になる。

通達は単なる行政文書だから、我々民間人を拘束する法的規範にはならないということは、税理士やそれに近い専門家は、みな知っている。

しかし、実務上は税法の基本通達・個別通達が、事実上の規範化して、実務慣行が通達ベースで成立している場合が多い。

僕の経験では「通達は法律じゃない!」なんて誰でも分かることを争点化するより、「通達と違うこれもOKですよね?」と、税務署に検証を願った方がいい。

僕自身、通達ベースで実務慣行が成立している案件について、通達とは異なる取扱いで「是」とする回答を何度かもらっている。

といっても、自主申告に任せる仕組みの本邦税法にあって、法的欠落をカバーする仕組みとして、通達行政は本当に頑張っていると思う。

 

【通知】

僕の表現の正確さはともかく、通達行政の税務に対して、医療行政は「通知行政」だと感じている。

「医療機関の非営利性の徹底」「社会医療法人の認定について」、など超重要事項が、この新聞がいうところの「拘束力0の通知」で発出されている。

しかし厚労省発出の「通知」は、難解な法律や告示を詳説した事実上の実務の拠り所だから、法的拘束力云々を問わず実務者には無視できる存在ではない。

今回コロナ通知の問題は、政府・厚労省・都道府県が本質的に「コロナ対応しているのは誰(どこの病院)か」を曖昧に捉えたまま、医療行政を敢行し続けたところが良くなかったと考えている。

感染症対応できる医療機関の実態把握と、その後方病院や後方施設の設定について、通知を受けた都道府県には判断する余力はなかったと思う。

国は、能力ある国の機構を、その実態把握に投入すれば、通知数など半分以下で済んだのでないか。

 

 

詰まるところ、税務は通達行政、医療は通知行政。

それらの最終的な拘束力はともかく、実務慣行はそのベースで作られている。

通知行政批判は、相当古い時期から繰り返されていたが、根本には「通知待ちの日本人気質」という民間側の姿勢もあるのではないか。

僕も先日、「医療機関の非営利性」通知に基づいた指摘を受けたが、この通知には根本的矛盾が多い。

これをクライアントとともに真摯に議論して、考え尽くした回答をすることで、通知行政に対して能動的な一言を、問いかけたいと思う。

 

岸野康之 拝(20210221 89.3kg(着衣 過去最高))

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