税理士 岸野康之 事務所

医療機関専門
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税理士 岸野康之 事務所のブログ 一覧

税理士の仕事(2)何をしているのか

常々医療のお話を書いているように、僕は医療業界という専門分野を持つ税理士である。

法人、自治体のお客様はほぼ医療機関、個人については医師でなくてもご一緒している。

 

ところで税理士は日常、どんな仕事をするのかという点について、お話してみたい。

 

 

1 大前提で ~会計事務所という外から見えない器~

 

5年前の統計だが、当時、税理士が77,000人くらいなのに対し、会計事務所は28,000件程度あったらしい。

その会計事務所も、世界中に拠点を持つ〇大法人、税理士・会計士を数百人抱えるところ、そして正に1人で展開する方まで、様々だ。

さて、その28,000件程度の会計事務所が、何人くらいで運営していて、どんなお客さんを抱えているか。

 

実は、これが基本的に、外からは全く分からないのである。

 

例えば病院だと、ベッドの数、医師の(だいたいの)数、持っている診療科、得意な医療などが、外からも分かる。

広告やホームページだけでも結構分かるし、別に出されている様々な資料もある。

しかし、会計事務所はそれが分からない。

 

僕の小さな事務所から右に20m行くと、当事務所(職員3名ほか)と同規模の事務所がある。

左に50m行くと、たぶん職員30人くらいいる会計事務所がある。

 

しかし、彼らにどういうお客さんがいて何をしているかは、仲良くなって聞かなければ、僕も全然分からないのだ。

そういう意味では、僕などは「医療機関専門です」と言っているから、比較的分かりやすい存在だと思う。

それでも、僕がどんな規模のお客さんを何件有していて、どう付き合っているのかは、外からは見えないのである。

 

 

2 会計事務所の仕事

 

会計事務所の仕事は、非常に平たくいうと次のような感じだ。

(1)法人や会社など団体、あるいは個人事業主の、帳簿を点検したり作ったりする仕事

(2)税務署など役所に、税金の申告書をはじめとした、税関係の書類を作って提出する仕事

(3)帳簿や税金に付随して出てくる様々な相談を受けたり、雑事について応じて解決などする仕事

(4)金融機関の融資対応を手伝ったり、土地や建物など財産を調べたりする仕事

(5)税務調査があったら、税務署対応を行う仕事

 

などなど、あげるときりがないが、他にも色々なことをしている。

では、ここからはその中身について、何回かに分けて話してみよう。

 

 

3 帳簿を見る仕事、帳簿を作る仕事

 

まず、「帳簿」について。

帳簿については、顧問先が作った帳簿を点検する仕事と、顧問先のために帳簿を作る仕事の、大きく2つの仕事がある。

 

お客様の内部に帳簿を作る「経理課」とか「経理担当」がいらっしゃると、その帳簿を点検することになる。

逆に、お客様側では帳簿作成に一切タッチしない場合、会計事務所が帳簿を作ることになる。

帳簿を作って差し上げる仕事のことを、一般的に「記帳代行」と呼ぶ。

 

僕の事務所は、点検だけするお客様と、作って差し上げるお客様の比率は、だいたい半々である。

しかし大きい会計事務所では、一切記帳代行の仕事をしないところがあるし、逆に小規模なところでは、記帳代行だけをする会計事務所もある。

 

 

さて、次回はその「記帳」という仕事を巡って税理士の世界で何が起こっているのか、僕なりの考えを書いてみたいと思う。

 

 

岸野康之 拝(本日重量  85.6㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

税理士の仕事(1)概論

僕はFacebookをしているのだが。

今日、Facebookに「4月15日、今日で確定申告おわる~」と書いたところ。

昔の後輩から「プロでもギリギリになるんですね~」と、コメントがあった。

 

彼のコメントは、気軽に問うているが、じつに本質的な問題に言及している。

同じ腕の医者が10人いるとき、どこで医療の差が出るか、という話にも通じるものがある。

せっかくなので、税理士(会計士も含む)の仕事という話を、ちょっと何回か書いてみようと思う。

 

 

1 税理士はどんな仕事をするか・「縦」割りで見る

 

縦割りで述べると、税理士は次のような仕事をする。

(1)会社とか法人の会計・税務

(2)個人の自営業主、サラリーマンなどの税務(これがいわゆる確定申告)

(3)人が亡くなった時の相続や、そのときのための税の対策など

(4)税には関係がない、経営や会計のアドバイス、その他・・・

 

そして、中には「法人専門」「相続税専門」など、縦でジャンル分けして生きる人たちもいる。

中には税金には触れず、会社経営のアドバイス専門なんて人もいる。

個人の確定申告専門、という人も存在するらしい。僕はお目にかかったことはないが・・・

 

 

2 税理士はどんな仕事をするか・「横」割りで見る

 

さて、税金の種類などで分けるのを「縦割り」とすると、次のような横割りという考え方もある。

(1)大企業に特化している税理士

(2)中小・零細企業に特化している税理士

(3)街の商工会や法人会に根を張る「地域密着」の税理士

(3)飲食業専門、医療業専門(私)、新規開業専門、など業種などで特化している税理士

 

そう、大企業の税務会計に特化というか、その中でずっと生きている税理士・会計士は結構いる。

別に「そこに懸けてます!」とかいうのでなく、大手税理士法人に入り、その流れでそうなっている方が多い。

ただ日本の企業体は99%が中小企業だから、それに合わせて中小企業が中心の税理士は、当然多い。

あと、横割りで考えたら「地域密着型」というのも、ある種の特化と言えなくもない。

 

そういうものの一つで、僕はまさに医療専門の業種特化型だ。

その代わり、地域は全く関係ないし、法人税でも相続税でも何でもやる。

 

 

3 税理士はどんな仕事をするか・経歴などで見る

 

これは本質的にはあまり関係ないことだが、念のため。

(1)国税庁などのOB → 実は全税理士の40%近くは、法定の税理士試験を通過していないOB組。

(2)税理士試験5科目の受験、合格組。

(3)税理士試験、2、3科目の受験免除組 → 大学院などに行って、受験免除が受けられる。

 

税務行政というのは、気持ちいいほどサッパリしている面と、土着的・粘着的気質の面がある。

OB文化はその土着の表れであり、ある種の所轄税務署ではOB税理士には頭が上がらない、などの特質がある。

ただし、それは近年かなり崩れているし、地域差もある。

僕は、税務調査などで「すごく」有利になるOB税理士の登用はアリと思うが、税務署に少し顔が利く程度のOBなら、僕の方が断然いいと思う。

いま統計的に、税理士全体の中で「にわかOB」の比率が急増しているので、我々も納税者たちも、注意深く見定める必要がある。

 

あとは税理士試験を正規の5科目合格したか、大学院進学などによる「試験一部免除」を受けたか、という経歴の違いがある。

ただし、これは正直なところ、あまり実務力には関係ないし、どちらも一長一短程度の話であると思う。

僕は運の助けで5科目合格したが、実務をしてみると、そこは大した問題ではないのが税理士の世界である。

 

 

さて、明日からも税理士の仕事シリーズ、興が乗って来たので続けて書いてみようと思う。

 

岸野康之 拝(本日重量  85.7㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

酒場(1)種別

元来さほど酒に強くないが、様々なお付き合いの過程で、お酒を呑む機会がボチボチあった。

ところで、酒場には様々な類型があり、酒呑みといっても一言には言い尽くせない。

以下、今日はまず酒場の類型について「素人呑み助」として、行った回数が多いほうから述べてみたい。

 

1 居酒屋

 

僕の人生の中で、一番多く行ったことがあるのは「居酒屋」で、廉価な酒と食事が味わえる身近な台所である。

加えて、その店が繁忙していないときにお邪魔すると、店長や店員さんとの対話が楽しめる。

地方出張の折などは、地域の事情や最新情勢を教えてもらうこともできる。

 

居酒屋は、僕にとって一番身近で利用頻度が高い、酒場である。

ちなみに、僕の中では「小料理屋」は一応、居酒屋に含まれる(おかしなジャンル分けだが)。

 

 

2 バー

 

バーはBARと書く。

一見敷居が高く、非常に格好いいイメージがあるし、全ての街にある感じもしない。

しかし僕にあっては、居酒屋に数千回行ったことがあるのに対し、バーもまた、数百回は行っている。

 

バーでは基本的に、「濃いお酒」が出る。

もちろん、カクテルやリキュールなど薄めものもあるが、基本的にウイスキー、スコッチほか40度近い洋酒が主役だ。

で、僕は強くないにもかかわらず、若い頃からそういう濃い酒を「ロック等で」ペロペロ飲むことを楽しんできた。

 

バーは決して金持ちのスペースでないし、行くのに特別な気負いも必要はない。

ただ、ちょっと洒落た空間を味わう楽しみが得られるのと、同時に少しばかりお酒を知っている感じが必要なのは確かな空間だと思う。

 

 

3 スナック

 

実はスナックというのは、僕において定義が難しい。

ただし出動頻度としては、居酒屋数千回、バー数百回、とすると、スナックには50回くらいしか行っていない。

回数が少ない理由は単純で、40歳過ぎてチラチラと「スナックかよい」に目覚めたからだ。

 

徐々に慣らし運転で始めたスナック通いも、いまは数か所にボトルが入っており、適宜好きなところに行ける。が、・・・

コロナ禍の影響で、すっかりスナックに行くことが無くなってしまった。

僕が敬遠しているのではなく、「行こう」と思う時間には、〇〇宣言などで閉まるようになってしまったのだ。

 

飛沫が飛べばウィルス等が飛散するのは当たり前だが、飲食、スナックに全ての責があるとは思えない。

密がイヤなら、東京オリンピックを鳥取オリンピックにして、国会等外形的な必要性のみで存する施設を、稚内あたりに移転すればいい。

スナックの営業時間短縮の前に、すべきことは山ほどあるはずである。

 

4 キャバクラ

 

実は、僕はキャバクラに行ったことは、生まれてから10回未満しかない。

居酒屋には1000回以上行っているのに、だ。

しかも行った時は、たいがい職場や団体の先輩、友人などにグッと引っ張られて行ったときである。

 

決して格好をつけたり、ある種の潔癖ぶったりして、いかないわけではない。

ただ、キャバクラというのは、僕にとって「一方的に気を遣ってしまう」空間なのである。

 

できれば、酒場に行ったなら癒されたいし、あるいはラクになりたい。

しかし、キャバクラに行くと、前後左右の女性などにどうしても気を遣ってしまう。

酒場に行くのであれば、できることであれば気遣いなしで行きたい。

そういう意味で、僕の性格や心情にはこの時点では合致しない酒場なのだろう。

 

5 ガールズバー

 

これが当たりハズレがあるので何とも言えないが、我が生涯で5回くらい行っただろうか。

正直、どーでもいい、くらいに思っていたのだが、最後に行った時からちょっと重宝したいと思った。

若い女性がカウンター越しに接客する点で、スナックの若い人版というところだが、当ると「会話ができる」のだ。

 

酒場で会話ができるというのは、中年男児(男女関係ないね)にとって、大変楽しいことである。

この比較的新しい商形態が、僕のような中年男児のニーズに迫ってくれるとは意外だったが、ともかく今後もチョコチョコ顔を出したい。

 

 

6 クラブ

 

実はこの業態は一度しか行ったことがなく、よく分からない。

人生の成功者が行くようだが、一度ボスに誘われてちょこっと行った以外には、「クラブ的スナック」までしか行ったことがない。

いずれ、小説家や政治家のように、クラブなるところで濃い酒を呑むということも、ちょっとしてみたいものである。

 

 

次回は、また医療や税務のお話に戻るつもりだが、ときどき、酒場について書いてみたいと思う。

 

岸野康之 拝(本日重量 85.0㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

民間医療機関の世界(4)地域包括ケアシステム

1 地域包括ケアシステム

 

地域包括ケアシステム、という言葉が浸透して久しい。

読んで字のとおり、高齢者などの皆さんを、地域で包括的にケアしていくシステムである。

 

link1-4のサムネイル(出典 厚生労働省HP)

 

昔の医療福祉の流れは、家庭で生活していた人が、病気になると病院に入り、そこで最期を迎えるものであった。

あるいは、家庭にいた人が老人ホームなどで生活するようになり、やはりそこから病院に入り、最期を迎えるという感じであった。

そういう病院や施設の機能自体は、いまももちろん、変わってはいないのであるが。

 

この少子高齢化社会では、まず高齢者が病院に入ることになる。

受け入れた病院は、いまの診療報酬体系(医療費削減の流れ)の中では長く入院させられないので、老健などに移ってもらうことになる。

老健も長くいさせられないので、特別養護老人ホームや介護医療院に入り、そこで最期の看取りをしてもらう。

あるいは、病院 → 老健 → 自宅 と移り、その自宅で在宅介護等を経て、看取りをしてもらう。

 

このように、病院で最期を迎えるのではなく、病院から施設に戻り、または家に戻り、そこで最期を迎えることを国が推奨する。

地域包括ケアシステムとは、(ある側面に光をあてると)そうして医療、福祉、自宅(在宅)をシームレスで途切れなく循環させる、国の施策で構築された仕組みである。

 

 

2 地域包括における官と民の役割

 

いまや、全国の至る所に地域包括ケアの仕組みが行き届いている。

国が推奨するシステムだから、一見すると、国や自治体の機関が中心となって形成している感じがする。

 

確かに、まず国が様々な規則や自治体への指導を通じて、医療福祉の「総量規制」を実施している。

続いて、やはり国が、診療報酬体系や介護報酬体系の整備・改定を通じて、急性期病院 → 回復期などの病院 → 老健、特養 → 自宅(在宅)という流れに政策誘導している。

 

さて、その政策誘導をいち早くキャッチして回復期の病院、老健・特養、あるいは在宅医療や看護などを実施するのは、民間の方だ。

民間医療機関や社会福祉法人が、診療報酬や介護報酬で採算が良いパートに設備投資をして、国の政策誘導に乗って展開していく。

そうして瞬く間に、各地域ごとに民間の医療機関、福祉施設による地域包括ケアシステムが確立していくのである。

 

さらに、その地域内の地域包括ケアシステムを、ある特定の医療福祉グループが自らの施設だけでほとんど完結させているような事例も多い。

そういう民間グループでは、基幹病院を退院した患者が自グループの老健、特養、他の福祉サービスに移っていく流れを確立している。

そして少しでも多くの患者・利用者が、自らのグループでワンストップで医療福祉サービスを提供できるようにしているのである。

 

 

3 地域包括ケアモデルの転用は

 

日本の医療政策は、いろいろと課題は多い。

しかし、この地域包括ケアシステムの構築について賛否はあろうが、次の点において(珍しく)成功例であるように思う。

(1)国の狙い通りの形が、各地域の様相ごとに早々に構築された。

(2)高度急性期→一般急性期→回復期→慢性期→施設→訪問・在宅 という報酬による利益誘導通りの人の流れが形成された。

(3)公共にしかできないこと、民間にしかできないことが、結果的にキレイに区分、機能分化された。

 

高度な医療などは国、自治体、公的病院等が担って、それ以外の民間グループが身近な医療福祉を担う、という機能分化は、経済構造としても効率的だ。

 

 

僕は、この仕組みを構築した方法論の応用で、救急拠点や産科拠点の復活もできないものか、とよく考える。

高齢化の勢いが凄まじいので、かなり大胆に、医療から介護への流れの組み換えを行ったわけだが、少子化の勢いもまた凄まじい。

 

少子化対策のパートに、同じ地域包括ケアの発想を入れて、「お産から学童保育までをシームレスに」などできれば、医療福祉資源も大変助かるのではないか。

そういう仕組みの転用が、大変苦労されている産科医や、複雑な社会で子育てする親たちを助ける仕組みになる可能性もある。

医療福祉の連携では、報酬制度による大胆な政策誘導をしているわけだから、少子化対策でも同じようなことができないものか、と思うがどうであろうか。

 

岸野康之 拝(本日重量 84.7㎏(脱衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

民間医療機関の世界(3)事務長

医療機関は、医師が医療をすることで、初めて成立する。

看護師がどれだけ多くても、事務局がどれだけ優れていても、医師がいなければ医療機関は存立しない。

この当然で単純な事実が、意外に軽んじられやすいので、僕は議論・会議等でこの基本原則を述べる機会が多い。

 

ところで、その医療行為を支える医師が充足しているという前提に立つと、続いて大切なのが事務長だと、僕は考える。

医療体制上は、医師に続いて看護師・薬剤師、ほかコメディカルの皆さんの存在が、当然重要になる。

しかし、医療機関が一定規模以上になっていくと、その収支を事務的に統制しながら運営する、事務専科の人間が必要になるのである。

 

以下、僕が感じている事務長「像」について、徒然なるままに書いてみたいと思う。

 

 

1 内部で事務長になっていく人たち

 

大学病院、日赤等の公的病院など、全体として組織が確立している医療機関では、事務局内で「昇格人事」がある。

もちろん引き抜きや転職組もいるが、若い時期に入社して定年まで病院事務局で働く人たちがいて、そうして事務長になる人たちがいる。

そういう事務長たちと仕事をすると、とにかく医療運営の隅々までよく知っていて、舌を巻くことが多い。

 

一方、そういう方の中には、50代などになって他の病院に「腕利きとして引き抜かれる」方がいる。

ところが、技術的、経験的に素晴らしいものがあっても、行った先の病院で、思うように力が発揮できず去っていく人を、何人も見てきた。

医療機関は人的、構造的、そして医療機能の個別的「個体差」が非常に大きいので、力を発揮できる場所とできない場所が、はっきりしてしまうのだろう。

この点については、異動する側も引き抜く側も、しっかり了解したほうが良い点であると思う。

 

 

2 銀行から事務長としてくる人たち

 

全国的に、銀行出身で病院事務長になる人はかなり多い。

その中でも、大きく次の二つに大別される。

 

(1)ある年齢になり、転籍人事でやってくる方

銀行である年齢や肩書になって事務長としてきた方は、僕の経験上、次のように分かれていく。

① 元金融マンだけあり、その優秀さを発揮される方

② 事務長としてはイマイチだが、銀行取引を有利に運んだり、病院内に同行出身の派閥を作るのに長けている方

③ 何の用も果たさせない方

 

医療機関は、金融マンが金融時代の経験をそのまま生かせるほど、単純ではない。

そこを錯覚している方は、かなり早い時期に現場でハレーションを起こしたり、トップに見放されている。

僕は彼らを見ているといつも、「一年生になったつもりで頑張って欲しい」と思う。

基本的な素地は優秀なわけだから、それが医療現場で力を発揮する、一番の近道なのだ。

 

(2)若いうちに、病院のオーナーなどに引き抜かれた方

このタイプの銀行出身者は、僕の経験上は有能な方が多い。

金融構造や銀行など大組織の仕組みを知りつつも、銀行出身であることを鼻にかけず、新しいことに取り組む力がある。

そういう事務局長たちは勢いと謙虚さを併せ持っており、一緒に仕事をしていて、大変学ぶことが多い。

 

また、こうした事務長たちは色々なセクションを、横断的に動き回る傾向がある。

実は病院のように職制が固定的な組織では、固定のセクショナリズムに囚われない動きをする事務職の存在が、極めて重要になる。

そういう方が1、2人いるだけで、組織の成長速度が変わると言っても過言ではない、非常に重要な存在である。

 

 

3 役所から来る事務長たち

 

県庁や市役所から下って来た事務長たちは、民間ではなかなかハマらないのをよく見かける。

役所の論理が通用しない、という話だ。

しかし、ハマろうが外れようが、地域の役所から天下り事務長を迎える慣行がある公的病院も多い。

それはそれで、ある種の機能を果たしているわけだが、現場としては悩ましいものも多いようだ。

 

ところで、時々、天下り事務長がドはまりして、うまく行っている医療機関もお見掛けする。

もともと、事務屋をさせたら公務員の方は、とびきり優秀だ。

同じ役所に居続けると、人事ローテの中で有能さが埋もれがちになるが、ピンときたらデキるのは役所出身の方である。

民間医療機関で役所の方を登用するときは、その優秀さを、ぜひ引き出すように頑張って欲しい。

 

 

4 職業事務長

 

これはここ数年で知ったのだが、いくつかの病院、クリニックの事務長を掛け持ちする「職業事務長」がいらっしゃるのだ。

これは大変貴重な存在であり、いまクリニックなど小規模医療機関の世界では、一番求められている存在でないか、と思った。

 

事務長自体が、そもそも当たりハズレがある。

しかも小さいクリニックでは、その当たりハズレがある事務長に人件費を投ずるのは、なかなか大変なことだ。

それが週に1、2回来る契約で働く事務長がいてくれたら、こんなに便利なことはない。

僕が知っている所では、週に一回来て、書類整理や事務事項を済ませているが、それだけでなく、クレーム処理や労働問題の対処も行う。

それがまた、あちこちで同じことをやっているから、大変腕が良いのだ。

 

僕はひそかに、この職業事務長を育成する仕組みを作りたいと思っている。

 

 

5 メーカーや製薬会社出身の事務長

 

僕は、このタイプの人たちは、あまり多くは知らない。

ただ時々ご一緒したり、噂を聞いたりすると、内容や評判がよろしくないことが多い。

給料がいいという理由だけで移って来たとか、リベート目当てだったとか、自信満々だが威張りん坊だとか、、、

もし、これを読んでいて「おれは違うぞ!」という方がいたら、よそで苦労している似た出身者の方に、色々教えてあげていただきたい。

 

 

とにかく、事務長は医療機関のキーになる存在である。

「いい事務長はいませんか」というのは、お会いする理事長たちとの挨拶言葉のようになっている。

 

ただ、決して「でき上っている良い事務長」など、その辺にいるものではない。

受け入れる側も、事務長になる側も、初心に帰って一から教える、一から学ぶの気持ちを持つことが、どうも一番早道であるように思う。

それは、ある年齢から医療の世界、会計の世界に一から飛び込んだ、僕自身が身に染みている実感でもある。

 

岸野康之 拝(本日重量 84.8㎏(脱衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

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