税理士 岸野康之 事務所

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税理士 岸野康之 事務所のブログ 一覧

医師と税金(5)所得控除シリーズ ②保険料等控除たち

我々個人が、確定申告や勤務先の天引きで納める税金は、国に納める「所得税」と、自治体に納める「住民税」、である。

どのくらい納めるかというと、所得税は下の表のように、所得が高くなるほど税「率」も高くなる。

一方、住民税はどの所得層でも所得の「10%」程度かかるとご理解いただきたい。

所得税 速算表のサムネイル

そして、所得税の確定申告や職場の天引きができていれば、住民税は(ほぼ)自動的に計算されていく。

その結果、いまテーマにしている「所得控除」は、ほぼ住民税にも適用される。

 

だから、このブログは「所得税」をテーマに書いているが、実際には節税効果は「住民税」にも及んでもっとお得、と思いながらお読みいただきたい。

複雑怪奇なる「住民税、ほか地方税」については、いずれ改めて書きたいと思う。

 

 

2 社会保険料控除

 

医療を受けるために納める健康保険(税)とか、国民年金、厚生年金、介護保険料、公務員の共済(保険や年金に相当)などいろいろが、「社会保険料」である。

この控除は「いくらまで」という限度はなく、基本的に自ら、または給与や年金から天引きで納めた分が控除される。

 

開業医や転職中の人など、国民年金や国民健康保険を自分で納める人は、納めた金額の記録などを、申告に向けて保管して欲しい。

なお、電話等で照会できるものもあるが、余裕ある申告には記録の保管が一番だ。

 

なお、この社会保険料控除などは、その年中に「支払った」ものが、控除を受けられる。

だから例えば、つい1年滞納した分、本年分、勢い余って納めた来年分、の計3年分を一度に支払ったら、3年分を一回の申告で控除できる

(でも遅れちゃだめよ)

 

【僕の説明がザクザクのため、より詳しい国税庁の 社会保険料控除URL】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm

 

 

3 小規模企業共済等掛金控除

 

(1)小規模企業共済

 

この共済は地味だが、次の2点において強力で、自営業者の間で「コレええよね」と、納められてきている。

 

まず、この保険掛金(年間最大84万円)を納めると、その掛金全額が、所得控除となる。

さらに、これを一定期間以上かけると、基本は元本保証の上、退職所得や年金雑所得で、税制上お得に満期金(解約金)を得ることができる。

 

開業医の方は、従業員5人以下のうちなら加入可能、場合によっては共同経営の配偶者も加入可能。

医療法人成りしたときに、いったん「退職所得」として受けられる。

開業医のみならず、事業を営む個人、法人役員は、まずこの制度を確認して担当税理士などに相談してみて欲しい。

 

(2)確定拠出企業年金など(iDeCoなど)

 

iDeCoはいま話題の「個人型確定拠出年金」と呼ばれるもので、自分で運用先を選択することができる商品である。

 

開業医でも勤務医でも、iDeCo(個人型 確定拠出企業年金)の掛け金がある人は、全額をこの掛金控除で所得控除できる。

実は僕もおそばせながら、先日iDeCo加入の書類を取り寄せたところだ。

 

iDeCoは、掛金が全額所得控除になる上に、運用で一定程度の成果が出れば、支払った以上の元本が確保されるので、税効果が高い。

「コロナ禍でも堅調、iDeCo加入者176万人(2020年10月時点)」なんて数字も出ていた。

運用次第では元金が割れるが、自営業者は68,000円/月、勤務者は23,000円/月が掛金の限度という手軽さもあるので、ぜひ挑戦してみていただきたい。

 

【つみたてNISAとの比較】→ 僕がNISAにも加入したら、詳しくご説明の予定

 

この控除の対象になる掛金は他にも種類があるが、本稿では身近なものを掲載した。

 

【僕の説明がザクザクのため、より詳しい国税庁の 小規模企業共済等控除URL】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm

 

 

4 生命保険料控除

 

個人の税金上の話でいうと、生命保険というのは大きく3種類に分けられる。

 

① 一般的な生命保険    ・・・最大4万円(5万円)の所得控除

② 個人年金保険      ・・・最大4万円(5万円)の所得控除

③ 医療保険、介護保険向け ・・・最大4万円の所得控除

 

死亡やケガの際に保険金が出る、いわゆる生命保険が①だ。

しかし、年金財政が苦しい国は、できるだけ②の民間の年金保険に加入してほしい。

また、医療や介護にも、国はできるだけ③で備えて欲しい(③控除制度は比較的新しい)。

 

そんなわけで、生命保険には上記3種類の控除が用意されており、バランスよく入れば、最大で12万円の控除が受けられる。

注)①②で5万円まで控除のものもあるが、それでも①~③合計で12万円が限度。

 

ところで、実務で見ていると、①の保険ばかり高額加入する方が多い

②③には全く入らず、①だけ何十万円も保険料を支払う人も多いが、それでは4万円(5万円)までしか控除できない。

②③に加入していれば、全部で最大12万円まで控除が受けられる。

ぜひ、長寿時代にふさわしく②③の保険にバランスよく入り、より多くの年金や介護費を受取っていただきたい。

(保険会社の人に、損をしない設計の②③の保険を教えていただくと良い)

 

実は生命保険の真の効力は、単純な死亡・医療保険だけでなく、相続対策など複雑な場面で発揮される。

生命保険というのは存外奥深く、いずれそれだけでシリーズを書いてみたい。

 

5 地震保険料控除

 

こちらは手短にお話する。

地震保険に加入していると、支払額に応じて最大5万円の控除が受けられる。

また平成18年以前など、古く入った一部の火災保険なども、控除が受けられるものがあるので、心あたる方は確認していただきたい。

 

【僕の説明がザクザクのため、より詳しい国税庁の 生命保険料と地震保険料控除 URL】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm

 

 

岸野康之 拝(本日重量 85.6㎏(脱衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

医師と税金(4)所得控除シリーズ ①雑損控除

アメリカ在住で、帰国された際に税金のご相談をいただく医師がいる。

医療系の研究者で、政府界隈の情勢にも非常にお詳しい。

 

今朝、その方から来たメールに「米国は、いま政府が偽物の政権で成り立つ、異常な状況が続いている」と、記されていた。

確かに、ネット情報で新政権に関する記事を拾っていると、単純に脱トランプを喜ぶ状況にはなさそうだが、実際はどうなのか。

 

我が国では、好意的報道しか(表面のマスメディアでは)出てこない、バイデン政権。

米国内における本質的な動静、今後のアジア地域への影響が、とても気になるところである。

 

 

さて、今日から15種類の「所得控除」を書いていきたい。

なお、書いていくのは「所得税」の話だが、所得控除をするとほとんどの場合「住民税」も少なくなる。

複雑になるのでその説明は省略するが、実際の節税効果はより大きい、と思いながら、お読みいただきたい。

 

勤務医は基本的にはサラリーマンだから、それほど多様な節税手段があるわけではない。

それでも医師は年収が高い=税率が高いから、例えば所得控除額が10万円増えれば、税金が2~4万円以上、減ることになる。

ぜひコツコツ試みていただきたい。

 

 

1 雑損控除

 

(1)概要

 

災害などで資産に損失を受けた個人が、その損失額を申告して受ける所得控除である。

地震大国の我が国ではこれを使う方は多いが、日常で適用を受けるには、厳格なハードルがあることを、アタマの隅に置いて見ていこう。

 

(2)災害などの種類

 

その「災害など」とは何か、を、国は次のように言っている。

 

  • ① 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  • ② 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  • ③ 害虫などの生物による異常な災害
  • ④ 盗難、横領(詐欺や恐喝を除く)

 

①~③などは分かりやすいが、④「盗難、横領」は【詐欺や恐喝】が除かれている。

 

一部の判例を取り上げてみると。

まず「アスベスト除去費用」は、人体を害しても資産損失でないから対象にならない。

それから「振り込め詐欺による損失」は、自分の意思で振り込んだからダメとのこと。

あと「横領された」という訴えに、裁判所は「それは横領でなく詐欺行為だから」ダメ、と。

刑法上の盗難、横領の概念を、厳格に適用するようだ。

 

コロナなど「ウィルスは生物だ」と主張しても、そのウィルスが資産に直接損失を与えるわけではないから、対象にはならない。

と、なかなか厳しい。

 

(3)対象となる資産と損失の種類

 

まず、事業用の資産は対象とならない。

それから、別荘、30万円超の貴金属ほか「生活に通常必要ではない資産」は対象外。

生活に必要最低限なものだけにしてくれ、ということだ。

 

で、その上で住宅や家財などの損失の金額、原状回復費用の金額、などが雑損控除の金額になるが、ただし。

① ちょっと込み入った計算式や、判定方法がある。

② 保険金などで補填された金額分は、対象にならない。

ここまで見てきて、損失を受けた「資産の種類と金額」についても、最低限の場合に限られている。

 

 

というわけで、ハッキリいって、日常「おっ、イケるかも」といって使える制度ではない。

以前、ある会社から「雑損控除の説明を営業の切り口にしたい」という企画をご相談されたが、それは申し訳ないけどお断りした。

積極的に運用する制度として、雑損控除を伝えるのは難しい。

 

 

しかし、だ。

令和元年度の確定申告では、4万2千人が1300億円の雑損控除を、申告したそうだ。

秋の大豪雨や熊本地震などはもちろん、小さな災害や事故はたくさん起きており、多くの人が様々な事情で申告している。

 

正直なところ、雑損控除の確定申告を自力で作成して申告するのは、困難だ。

だから、もし「おやっ?もしかして」と思ったら。

適用の可能性は定かでなくても、まず近くの税務署や身近な税理士にご相談することをお勧めしたい。

 

 

しょっぱなが、ちょっとマニアックな税制になってしまったが。

次回以降も、所得控除について、お話を続けていこうと思う。

 

【僕の説明はザクザクのため、詳しく知りたい人のための国税庁の 雑損控除URL】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm

 

岸野康之 拝(本日重量 86.7㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

医師と税金(3)所得控除という経費

ここ最近、僕の周囲におられる同世代の女性たちが、BTS(防弾少年団・韓国のアイドルグループ)にドハマりされている。

そこまで熱狂するか?と思いつつ、世界的人気を誇るだけあり、昔ながらの「歌って踊れる」とは、ちょっと違う世界観を感じさせる。

ところで先日、姪っ子がウチに来たときにBTSに興味があるか聞いたら、「アタシも、アタシの周りも興味ない」との返事。

必ずしも、全世代的にまんべんなく人気がある、というわけではなさそうである。

彼らはいったい、世界のどのファン層をターゲットにしているのか、いずれBTSのマーケティングなどを勉強してみたいものだ。

 

さて、開業医(自営業主)、勤務医(サラリーマン)が共通してできる節税として、「所得控除」について、一緒に考えてみたい。

 

1 所得控除という経費

 

我が国では、所得がある居住者(非居住者は一部)には「所得控除」が適用される。

所得控除とは、自営業者、不動産所得者、サラリーマン、年金生活者ほか、あらゆる所得がある全ての人にとっての、簡単に言えば「経費」的なものである。

以前、このブログの中で「勤務医(サラリーマン)には、基本的に経費はない」という話をしたが、この所得控除は、あらゆる職業の人が使うことができる。

なので、この所得控除を上手に使うことが、勤務医も含めたあらゆる人の節税にとって大切になる。

申告書見本のサムネイル

 

 

2 15種類の所得控除 

 

所得控除は職業に関係なく、納税者が所得から差し引ける控除額、いわば事業者でいう経費のようなもの。

現在、次の15種類がある(時代により少しずつ変わっている)。

 

雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除

 

この所得控除は、事業者の経費のように「そろそろ年末だし、経費になる支出をしようか」というような、簡単な感じでない。

その1年間の保険料支払(保険加入)の状況、医療のかかり具合、年末の家族構成(家族の状況)などで、所得控除の額が決まってくる。

だから、年末になってから「何か所得控除はないか~」と慌てても、所得控除の金額が増やせるものではない。

 

そんなわけで、所得控除を経費的に上手に使う最大の秘訣は、「来年に向けて有効に使える所得控除は何か」をしっかり把握しておくことである。

 

明日からは、その所得控除について一つずつ、よく見ていきたい。

 

岸野康之 拝(本日重量 86.3㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

医師と税金(2)節税について知っておきたいこと

先ほどジムから戻る最中、飲食店から帰るクルマの渋滞に巻き込まれた。

そしてある駅前を通ったら、やはり若い人を中心に飲食を終えて帰る人並みで、ごった返していた。

緊急事態宣言は続くようだが、新しい生活様式などが浸透しつつあるが。

春の日差しとともに、人は確実に動き始めていると感じさせるここ数日である。

 

さて、少しずつ「節税」の話に入りたいが。

まず「節税ってなんなの?」ということを、少し理屈を踏まえてお話しておきたいと思う。

 

 

1 節税とは

 

「節税」は誰しも耳にする言葉で、比較的所得が高い医師にあっては、節税は関心事の一つである。
節税は文字通り、税を節約するという意味で、私たち税理士がお手伝いをする局面は多い。

また、税務署(国)が節税を手伝う、ということは当然ない。

しかし税務署(国)は、納税者が節税することを、自然な経済行動として捉えている。

だから時々「節税ばかりして、税務署に何か言われないかな」という話を聞くが、そんな心配はいらない。

私たち国民は、胸を張って節税にいそしんで良いのである。

 

ところで、節税とは似て非なる、混同してはいけない近似概念がある。
それは、「脱税」と「租税回避行為」である。

本稿では、何が節税で、どこから先が節税を超えてしまうのか、少しお話したい。

 

 

2 節税、脱税、租税回避行為

 

(1) 節税
節税とは、法律の範囲内で、税金が少なくなる選択をする経済行動全般である。

【節税の一例】
・ただ貯金をするのでなく、利益が非課税の商品や、税金が少なくなる積立などを選ぶ。
・個人事業者が(所得税の)納税額が増加したので、税率が有利な、法人を設立する。
・(自営業者など)あえて新車でなく中古車を購入して、目先の税金を少なくする。
・配偶者、親族が扶養に入れるよう所得を低く抑える、ふるさと納税をする、など。
・土地の売却時期を少し待つと低税率適用になるので、売買契約を延期する交渉をする。

このように、法律が予定している選択肢の中で、納税者が納税額が低くなる選択をするのが節税である。

 

(2) 脱税
脱税とは、「偽り、その他不正な行為」によって、税金を免れることである。
技術的には様々な方法があるが、一番典型的なのが「所得隠し」だろう。
【脱税の一例】
・各所からの謝礼金が多額になったが、確定申告していない。
・窓口でサプリメント販売した売上を、売上帳簿から除外した。
・実際には明らかに取引や支払いがない経費(架空経費)を、計上した。

・サラリーマンがYouTubeなどで一定額の副収入を得たが、申告していない。
・事業で使っている預金口座を、帳簿や申告書に記載していない。

例をあげればキリがないが、脱税は明らかな法律違反であり、刑事罰や重い加算税の対象となる。

また、周囲に調査が及ぶことで外に知れれば、社会的信頼の失墜も招く。

 

(3) 租税回避行為
「租税回避行為」とは、脱税のような違法性はないものの、法律が予定していない不自然な経済行動による税負担の軽減をいう。

こうした税軽減の手法は、国も放置することはせず、ほとんどの場合、後年に税制改正などで封じられることとなる。

【租税回避行為と、その行為の「その後」の一例】
・保険給付を全く期待していないが、節税効果が高い生命保険に加入する。
→ 税制見直しにより、節税商品の販売は何度も規制されてきている
・意図的に海外居住者(日本非居住者)に「した」親族に、財産贈与して課税を免れる。
→ その後、同じ手法で租税回避ができないように税法が改正された。
・消費税や法人税の納税額を少なくするため、会社をいくつも設立する。
→ こうした手法は非常に多いため、常に国は少しずつ法改正している

・誰でも作れる一般社団法人への財産移転により、相続税等の負担軽減を図る

→ 2年前に国が封じ込め策「第一弾」を施行した(もっと厳しくなるのは明らか)。

こうした租税回避行為が厄介なのは、「節税」や「脱税」との線引きが曖昧である点だ。
僕は仕事柄、よくネット記事などをもとに「このやり方は大丈夫ですよね?」などと聞かれるが、全然大丈夫でない話が多い

租税回避行為を推奨するコンサルタントなどもいるが、損失や法律違反と隣り合わせであることも多いので、注意していただきたい。

 

 

3 そもそも日本の税金は「申告納税制度」

 

さて節税の本題に入る前にもう一つ、「申告」という考え方に触れておきたい。
日本の税制は「申告納税制度」と呼ばれる。

文字通り、自分で申告する、自主申告による納税方法だ。

具体的には、自分で一年間の収支などを計算して、税務署に「私の税金は〇〇円になると思いますから、〇〇円を納めますね」と、申告書面を提出して、同時に税金を納める制度である。

こうして納税者が申告と納税をすれば、まず一旦は受理され、機械的に処理される仕組みである。

だから、よく「ぼく、その計算方法でずっと税務署にOKもらってるよ」という方がいるが、税務署はとりあえず受理しても、別に「その計算方法にOK」を出したわけではない。

単純に、年間に数百万件の申告の中で、そこがたまたま税務職員の目やシステムに触れておらず、問題として扱われていないというだけである。

 

申告納税制度では、どんな申告書を作成しても受理はされる

しかし、税務署職員の目や国税庁のシステムに「おや?」と感じさせるものがあれば、あるとき突然、質問や調査がやってくる

またそんなときは自分だけでなく、その周囲にも調査が入ることもあり、評判や信用にかかわることになりかねない。

 

そんな心配をせず、適切な節税を選択して行くことは、快適に税金と付き合っていく大切な秘訣と言える。

 

次回以降は、開業医、勤務医を問わずにできる身近な節税を、紹介していきたい。

 

岸野康之 拝(本日重量 87.0㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

医師と税金(1)税金の世界観

今日は病院の事務局長たちと、会議の日。

僕がご一緒する経理財務、医事のほかにも、広範な議論が展開された。

特に、どこでも出る話ではあるが、「医師採用」の活動について花が咲いた。

 

ベッドがある病院だと、短期にせよ生涯にせよ、勤務者として医師の人生をお預りすることになる。

医師の人生を・・・というと大仰だが、決してテレビで見るような、365日メスを握り続ける医師ばかりを雇用するわけではない。

 

腕を上げ名を成したい方もいれば、きっちり労働時間を遵守したい方も、労働に見合った報酬を望む方もいる。

そこには医師たちの普通の日常があり、むしろ所得が通常よりに高いだけに、抱える独特の悩みがある。

 

そこを踏まえて、ここから数日、勤務医の税金と節税、開業医の税金と節税について、いくつかの視点からお話していきたいと思う。

今回は、その前段として、踏まえておきたい重要な税金の世界観について、お話したい。

 

 

1 税金の世界観

 

税金には様々な種類があり、法律上区分できるものでは約50種類ある。

50種類の税金のサムネイル

 

そのうち消費税は誰もが関わるし、所得税も確定申告するか源泉徴収されるかの違いはあるが、多くの人が関わることになる。

また、株式会社や医療法人など、法人を持てば法人税に縁ができるし、親族が財産を遺せば、遺された人は相続税を納める義務が生じる。

 

こうした代表的な税金のほか、人が生涯に何種類の税金に関わるかは、個々人の生活スタイルや趣向によって、大きく変わってくる。

 

・自動車所有者

自動車税、自動車重量税、自動車取得税、軽自動車税、揮発油税&地方揮発油税(併せて通称ガソリン税)、石油税、軽油引取税など

・不動産所有者

登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税&地価税(現在、両方運用停止)

・喫煙者

たばこ税、特別たばこ税、県たばこ税、市町村たばこ税

・その他

酒税、狩猟税、ゴルフ場利用税、入湯税、宿泊税

 

こうして見るだけで。

例えば「クルマと家を所有し、幅広い趣味があり喫煙もする」人は、我が国税金50種類のうち、半分近くに関わることになる。

 

逆に、比較的高収入の勤務医でも、賃貸マンションでクルマを持たず、酒もたばこも賭け事もスポーツもせず、趣味は読書で・・・

と、シンプルな生活を送っていると、縁がある税金は所得税(住民税)、消費税、相続税くらいになる。

私の経験上、そういうシンプルな生活をする方々は、所得層に関わらず意外にいらっしゃるものである。

 

いずれにしても、(金銭など)財貨が移転するとき、(金銭など)財貨やサービスが消費されるときに、何らかの税金が関わってくる。

金銭や価値が生じるときや動くとき、税金が出てくる、という大原則をアタマの隅に置いておきたい。

 

 

2 税金と「買うか、借りるか」

 

ところで、一般的に、住宅を「買うか、借りるか」という議論は、多くの生活者にとって永遠のテーマである。

この議論には、ローンか家賃かという比較以外に、実は税金の問題が関わってくるので、例示的に取り上げてみたい。

 

借りると家賃がかかるし、住み終えたときに資産が残らないから、一見、損に見える。

 

しかし不動産を買えば、登録免許税1.5%、不動産取得税3%などかかり、建物には10%の消費税が上乗せされ、購入後はその不動産所有について毎年1.7%(大幅な軽減税率などがある)の固定資産税等がかかる。

 

固定資産税等など少額と思いきや、30年有していて、高い場合には1.7%×30年=51%で、表面的には買った値段の半額近くを納める感じになるから、意外にバカにならない。

売却時に利益が出れば利益部分に20%の譲渡所得税がかかるし、最後まで所有して世を去れば、次世代は相続税を納める可能性がある。

譲渡所得税がかからない場合もあるが、そのときは買ったときより「値が下がっているとき」だ。

 

だから、不動産の所有を税金面で見ると、単純に買ったほうがお得、というわけではない。

 

逆に「借りる」という経済行動には、あまり税金がついてこない。

むしろ、借金などしていると、相続税や贈与税が少なくなる場合もある。

金利はかかるが、金利は経費になることが多いので、税金的には減少要因である。

 

 

不動産屋さんは売ってナンボだし、責任問題の点からも、あまりこういう説明はしない。

また、上記の「%」関係には複雑な計算式や例外があるから、全てがこの通りというわけではない。

 

ただ、「1億円の不動産を買って長く所有すると、他に1000万円単位で税金がかかる」というくらいの単純なイメージを持っておくと、「買うか、借りるか」の参考になるかも知れない。

 

まず今回は、私たちは税金に囲まれて生活している、ということをお話してみた。

 

次回以降、医師と税金というテーマを、もう少し広げてみたいと思う。

 

岸野康之 拝(本日重量 87.3㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))

 

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