税理士 岸野康之 事務所

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医師と税金(2)節税について知っておきたいこと

先ほどジムから戻る最中、飲食店から帰るクルマの渋滞に巻き込まれた。

そしてある駅前を通ったら、やはり若い人を中心に飲食を終えて帰る人並みで、ごった返していた。

緊急事態宣言は続くようだが、新しい生活様式などが浸透しつつあるが。

春の日差しとともに、人は確実に動き始めていると感じさせるここ数日である。

さて、少しずつ「節税」の話に入りたいが。

まず「節税ってなんなの?」ということを、少し理屈を踏まえてお話しておきたいと思う。

1 節税とは

「節税」は誰しも耳にする言葉で、比較的所得が高い医師にあっては、節税は関心事の一つである。
節税は文字通り、税を節約するという意味で、私たち税理士がお手伝いをする局面は多い。

また、税務署(国)が節税を手伝う、ということは当然ない。

しかし税務署(国)は、納税者が節税することを、自然な経済行動として捉えている。

だから時々「節税ばかりして、税務署に何か言われないかな」という話を聞くが、そんな心配はいらない。

私たち国民は、胸を張って節税にいそしんで良いのである。

ところで、節税とは似て非なる、混同してはいけない近似概念がある。
それは、「脱税」と「租税回避行為」である。

本稿では、何が節税で、どこから先が節税を超えてしまうのか、少しお話したい。

2 節税、脱税、租税回避行為

(1) 節税
節税とは、法律の範囲内で、税金が少なくなる選択をする経済行動全般である。

【節税の一例】
・ただ貯金をするのでなく、利益が非課税の商品や、税金が少なくなる積立などを選ぶ。
・個人事業者が(所得税の)納税額が増加したので、税率が有利な、法人を設立する。
・(自営業者など)あえて新車でなく中古車を購入して、目先の税金を少なくする。
・配偶者、親族が扶養に入れるよう所得を低く抑える、ふるさと納税をする、など。
・土地の売却時期を少し待つと低税率適用になるので、売買契約を延期する交渉をする。

このように、法律が予定している選択肢の中で、納税者が納税額が低くなる選択をするのが節税である。

(2) 脱税
脱税とは、「偽り、その他不正な行為」によって、税金を免れることである。
技術的には様々な方法があるが、一番典型的なのが「所得隠し」だろう。
【脱税の一例】
・各所からの謝礼金が多額になったが、確定申告していない。
・窓口でサプリメント販売した売上を、売上帳簿から除外した。
・実際には明らかに取引や支払いがない経費(架空経費)を、計上した。

・サラリーマンがYouTubeなどで一定額の副収入を得たが、申告していない。
・事業で使っている預金口座を、帳簿や申告書に記載していない。

例をあげればキリがないが、脱税は明らかな法律違反であり、刑事罰や重い加算税の対象となる。

また、周囲に調査が及ぶことで外に知れれば、社会的信頼の失墜も招く。

(3) 租税回避行為
「租税回避行為」とは、脱税のような違法性はないものの、法律が予定していない不自然な経済行動による税負担の軽減をいう。

こうした税軽減の手法は、国も放置することはせず、ほとんどの場合、後年に税制改正などで封じられることとなる。

【租税回避行為と、その行為の「その後」の一例】
・保険給付を全く期待していないが、節税効果が高い生命保険に加入する。
→ 税制見直しにより、節税商品の販売は何度も規制されてきている
・意図的に海外居住者(日本非居住者)に「した」親族に、財産贈与して課税を免れる。
→ その後、同じ手法で租税回避ができないように税法が改正された。
・消費税や法人税の納税額を少なくするため、会社をいくつも設立する。
→ こうした手法は非常に多いため、常に国は少しずつ法改正している

・誰でも作れる一般社団法人への財産移転により、相続税等の負担軽減を図る

→ 2年前に国が封じ込め策「第一弾」を施行した(もっと厳しくなるのは明らか)。

こうした租税回避行為が厄介なのは、「節税」や「脱税」との線引きが曖昧である点だ。
僕は仕事柄、よくネット記事などをもとに「このやり方は大丈夫ですよね?」などと聞かれるが、全然大丈夫でない話が多い

租税回避行為を推奨するコンサルタントなどもいるが、損失や法律違反と隣り合わせであることも多いので、注意していただきたい。

3 そもそも日本の税金は「申告納税制度」

さて節税の本題に入る前にもう一つ、「申告」という考え方に触れておきたい。
日本の税制は「申告納税制度」と呼ばれる。

文字通り、自分で申告する、自主申告による納税方法だ。

具体的には、自分で一年間の収支などを計算して、税務署に「私の税金は〇〇円になると思いますから、〇〇円を納めますね」と、申告書面を提出して、同時に税金を納める制度である。

こうして納税者が申告と納税をすれば、まず一旦は受理され、機械的に処理される仕組みである。

だから、よく「ぼく、その計算方法でずっと税務署にOKもらってるよ」という方がいるが、税務署はとりあえず受理しても、別に「その計算方法にOK」を出したわけではない。

単純に、年間に数百万件の申告の中で、そこがたまたま税務職員の目やシステムに触れておらず、問題として扱われていないというだけである。

申告納税制度では、どんな申告書を作成しても受理はされる

しかし、税務署職員の目や国税庁のシステムに「おや?」と感じさせるものがあれば、あるとき突然、質問や調査がやってくる

またそんなときは自分だけでなく、その周囲にも調査が入ることもあり、評判や信用にかかわることになりかねない。

そんな心配をせず、適切な節税を選択して行くことは、快適に税金と付き合っていく大切な秘訣と言える。

次回以降は、開業医、勤務医を問わずにできる身近な節税を、紹介していきたい。

岸野康之 拝(本日重量 87.0㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))


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