税理士 岸野康之 事務所

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確定申告の季節だから(3)保証債務の履行に係る譲渡所得の非課税

霞が関官僚については、いろいろ言う人もいるし、評価は様々だが。

僕は一点、昔から、彼らの「奉仕的な労働とその精神」には、目を見張るものがあると思っている。

ところで、つい先日、厚労省の幹部たちが深夜まで送別会をしたと、処分されているようだが。

「バレたら叩かれると分かり切った時期に、送別会を敢行するとは。

おそらく彼らには、早い時間に送別ができるような労働環境がないのでは。」

と考えると、どことなくかわいそうな感じがしてしまうのは、僕だけであろうか。

1 保証債務の履行に係る譲渡所得の非課税

さて、確定申告に絡んで、マニアックな話題を織り交ぜてみたい。

所得税法第64条では、「保証債務を履行するために、土地建物などを売った場合には、所得を無かったものとする特例」を定めている。

これは分かりやすく書くと。

・個人として、法人や個人の連帯保証をしてしまって。

・主債務者の法人や個人が、その債務を返済できなくなってしまって。

・泣く泣く保証人として、金融機関などに代わりに返済(代位弁済)することになり。

・その返済原資を作るために、泣く泣く自分の土地や建物などを売却して。

・保証した債務の支払(履行)のために財産を売って、「譲渡益」が出てしまった場合。

・その譲渡益に所得税をガッチリかけるのは可哀そうだから、「譲渡益はなかったことにしてあげる」。

こういう特例だ。つまり、

昔、1000万円で買った土地を、1億円の保証債務を弁済するために。

1億円で売却して、その1億円を銀行などに返済して、もうスッカラカン。

というときに、譲渡益9000万円について、20%1800万円の譲渡所得税を納めさせるのは、あまりに可哀そう。

なので「9000万円の譲渡益(譲渡所得)は、なかったことにしてあげる」という特例だ。

僕はちょうどいま、ある不動産の売却案件について、この特例を使った申告書を作り終えたところである。

2 この特例を使う上で、気を付けたいこと

(1)とにかく、気付くこと

税理士、ファイナンシャルプランナー、銀行員など、おカネ回りで生きる人は、この特例の存在を「知っていて欲しい」

この特例を、使えるのに、使わないで譲渡所得の申告してしまっても、税務署は教えてくれない。

また、僕は税理士試験で「所得税法」を受験しているので、最初からこの条文の存在を知っているが。

実は、この特例を知らない税理士さんがいる、ということも知っている。

だから、おカネ回りで仕事をする人は、この存在をアタマの片隅に置いておいて欲しい

(2)法律上の要件・・・次の三つを満たすこと

① 主債務者が「もう返済、むりっす」という状態になってから、債務の保証をしたのでないこと。

② 保証債務を履行するために、土地建物などを売っていること(売ったお金が、たまたま残っていたから弁済した、ではダメ)。

③ 履行した(代わりに支払った)債務の全部とか一部とかが、もう本来の主債務者から回収できなくなったこと。

そう、特に上記の③が非常に重要で。

代わりに返済したが、当の主債務者がまだ元気に商売してるとか、財産持っているとかの場合は、この特例は使わせないと。

国に税金を非課税をお願いする前に、その主債務者から、アナタが回収しなさい、と。

この、保証人が主債務者から回収する行為を「求償権を行使する」というのだが。

主債務者にはもう支払能力がない、回収できない、という明確な立証が必要なのである。

(3)パッと使えるものではないから、入念な下準備を

だから、僕が今回申告を請け負うときも、そうだったのだが。

前もって、「どの状態で譲渡したらこの特例を受けられるか」について、ものすごい回数の打合せ、確認をした。

何か一つでも要件を満たしていなかったら、場合によっては億単位の税金が変わってくることになる。

また、安易にこの特例を使っても要件を満たしきっておらず、裁決や裁判で「否認」されている事案も、多数ある

ぜひ、この特例が視野に入ったら、十分な下準備をして欲しい。

ということで、個人確定申告の世界には、「たまにしか出会わないが、知らないと見過ごす」特例が結構ある。

次回も、そんな特例に焦点を当ててみたい。

岸野康之 拝(本日重量 85.1㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))


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