税理士 岸野康之 事務所

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電子申告の世界と

昨日、申告を手伝っている友人から、確定申告について質問があった。

「65万円控除には、電子申告と電子保存が必要なの?」

僕は、全ての確定申告を電子申告しているので当然のことと思い、細かいアナウンスをしていなかった。

この質問の件の法改正は、65万円控除を受けたければ、電子申告か電子保存のいずれかしなさいよ、というものだった。

こういう質問をもらえるというのは、本当にありがたい。

来年からは全ての申告クライアントに、簡単な改正内容をアナウンスしよう。

ところで電子申告はかなり普及してきたが、ここで国はさらに電子申告を推進している。

令和2年度分から、大企業等は「電子申告の義務化」となり、実は小さな当事務所にも一件「義務対象」のクライアントがいる関係で、それ向けの環境整備を行った。

相続税も電子申告開始となり、早い事務所では電子申告対応を開始している。

上記の青色申告特別控除65万円(紙だと55万円)などは、電子申告に初めて具体的なインセンティブを付けたのでないか。

かつてもカードリーダーを買ったお金の還付があったが、それは5000円程度で、あまり意味をなさなかった。

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コロナの影響で、電子申告可能な時間帯も長くなった。そもそも申告期限自体も延びているし。

できるんならもっと早くやってよ、という感じだが、とにかく便利になった。

いまは、70歳以下の現役世代対応の税理士は、ほとんどが電子申告でないだろうか。

当事務所でも、修正、更正が絡むものや特殊事案以外は、すべて電子になっている。

僕が会計の世界に入る平成16年頃に、e-taxが運用開始されたが、僕自身は最初の6、7年くらいは、紙で申告書を出していた。事務所があまり対応していなかったことと、クライアントの多くが「電子は、本当に大丈夫なのか??」と疑心暗鬼であったこと、が理由である。

その後、電子申告をやってみると、こんなに便利なものはない。

何しろ、あるクライアントは10か所の自治体に申告書を出す、となると、10の封筒を用意して、さらに10の返信用封筒を用意して、控を印刷して、事務所の印鑑を押して、先方のトップの日程を押さえて、目の前で印鑑をもらって、期限内に郵便局に駆け込んで・・・

というプロセスが、不要になった。手元でぽぽぽぽーん! もうやめられへん。

昔は「押印のプロセス」が無くなったら、経営者たちとゆっくり話す機会が減り、付き合いに影響が出ないか心配した。しかし、むしろ他のサービスや経営の話をたくさんできるようになり、そんな心配は杞憂だった。

日頃からよく話していれば、納税時に改めて話す税の話題はあまりない、というのは、当り前だが重要な発見だ。

一方で事務所の職員には、申告書ではない「届出書」などは、しばらく郵送で出してもらうようにしている。

僕自身、「このパソコンが止まったら」「たまたまネットが落ちたら」など考えてしまう、途方のない臆病者だから、自分がペーパー手続ができることに、大変な安心感を持っている。

だから、この郵送で物事が動く手続は、知っていた方が良い気がするのだ。

同じような話で、記帳代行を主業にするには時代が違うと思うが、記帳事案を0件に近付けてしまうと、新しい職員は記帳を知る機会を逸することになろう。

自ら記帳を組成できない会計人は、応用もできない。それは、医療会計で有名な青木恵一先生も指摘しており、全く同意。

僕自身も修業期に、売上数十億の部門別会計を一人で記帳代行していた経験が、いま法人の経理指導に、大変役立っている。

どれだけ電子社会が深く固く成立しても、その成り立ち、プロセス、仕組みの、視覚や触覚による把握は必要なことだ。

それは決して、僕が古い漢(おとこ)だから考えることではない、と思う。

と、少し横道にそれたが、ともかく電子の時代。

ただし「ラクになった」で終わらせたら、僕らはAIの手下になるかも知れない。

空いた時間で何を提供するか、どう動くか。

これから深まる電子社会の中で、我々も、多くのビジネスマンも、より深く真価が問われることとなる。

岸野康之 拝  (本日重量 87.1㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))


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