税理士 岸野康之 事務所

医療機関専門
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税務調査(7)公的団体への調査②

余談だが、法人税の法律では、株式会社などの普通法人以外に、次のジャンルがある。

① 公共法人   法人税等の完全非課税

② 公益法人等  非収益事業についての法人税等の非課税

③ 協同組合等  法人税等の軽減税率の適用

そのうち①②は、僕の主戦場の一つである。

「税金がかからない病院で、何の仕事をするの?」と聞かれることがあるが、そこがまた奥行きがあって色々面白いのである。

さて、昨日の続きで。

公的な団体で、具体的にどんな税務が論点になるのかを見てみよう。

1 法人税 収益業務の計上漏れ

そもそも、公的団体という理由で、法人税が非課税になっているわけではない、という場合が多い。

社会福祉法人、宗教法人は法人税非課税と言われるが、そこで非課税とされる事業の範囲は全法人が同じ、というわけではない。

各法人を規定する法律(法人法)が何を述べていても、「法人税法上の収益業務」を実施していれば、そこは課税の扱いとなる

注意したいのは、この各法人法上の収益事業と、税法上の収益業務の範囲が違う、ということだ。

一般社団法人(原則的に、公益法人でも何でもないが)をはじめ、公益法人系の話の中で「収益事業(業務)」という言葉が出てきたら

まずそれが、各法人法におけるものか税法上のものを指しているのか、しっかり定義付けを確認するところから始めてほしい。

この話題は超奥深いので、いずれシリーズで書いてみたい。

2 源泉所得税 徴収漏れなど

公益法人等が非課税部分が多いといっても、経理部署などは、源泉所得税にはそれなりに気を遣っている。

特に「社会『医療』法人」の経理担当者などは、元々は普通課税の医療法人だから、結構きっちりやっている。

ただ一般的には、なにぶん税務調査など入る機会が少ないし、顧問税理士がいない場合もあり、どうしてもアンテナは低くなる

例えば、理事会のお足代など無防備にジャンジャン出したり、職員に商品券を渡しても源泉徴収していなかったり。

退職所得の受給申告書を作成していない時期があったり、給与源泉の「甲・乙・丙」の区分があやふやであったり。

何となく費消されているお金が、給与認定されるとか。

こういうのは、税理士関与が浅い公的団体で散見され、僕もスポット調査に入った団体で「開けてビックリ」ということがある

蛇足だが、税理士を関与させるというのは、一つの学習効果という側面がある。

事業者である限り税金が付きまとう以上、それに関する学習を重ねるというのは、必要な授業料と言える。

税理士の顧問報酬などは、どこまでいってもそう大したものではない。

失敗採用だった職員の人件費などよりよほど安いわけなので、顧問料を支払って良い税理士を付けたほうが良い ドヤァ

3 消費税

消費税もまた、普通法人、公益法人等、公共法人問わず、分け隔てなく納税義務がある。

民間である普通法人や、税理士がついている公益法人等では、そう大きい間違いが出ることはないと思う。

また、公共法人と呼ばれる自治体の特別会計などでは、結構頻繁に研修会などをやっており、職員がマジメに出席するから、あまり間違いがない。

では、どこで間違いが出るのか?

まず補助金等の収入は、普通は消費税はかからないが、たとえ行政からもらうおカネであっても、委託費などには消費税がかかる。

そこの違いが判然とせずに、「委託費を不課税としてしまった」として、追徴課税となるケースがある。

それから根本的なことで、「法人税の課税範囲」と「消費税の課税範囲」が一切異なる、ということをご存じない経理担当はいらっしゃる。

法人税の方ではあくまで「本来業務として非課税」であっても、消費税では課税扱いになる、という取引がある

これを見逃した結果、その法人を長年「納税義務なし」と判断してしまう団体がある。

一度ぜひ、「ウチは納税義務は、本当になかったか」を言う確認をしてみてほしい

僕はいずれ、公的団体向けに「税務顧問・公的パック」を作りたいと思っている。

公的団体は税理士を付けると、ただ税金がうんぬん、というだけでなく、数多くの気付きが得られ効用が高いと思う。

また、税務署の職員というリソースを有効活用するのなら、税務調査は、民間医療機関より、公共・公的医療機関に入るべきだ。

課税の公平というのであれば、費用科目の解釈を争うより、源泉所得税の徴収に誤りがある団体に、じっくり調査に入って欲しい

税務調査のお話は続けていくが、次回は一息ついた話題を書きたいと思う。

岸野康之 拝


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