病院の事務局 (4)公共と民間の間にあるもの
さて、一昨日、昨日と公立病院の事務局を悩ます要素を、4つまで書いてきた。
今日は、最も大きい要素であり、かつ本質的、実務的なお話をしてみたいと思う。
5 民営化、法人化
(1)行財政改革の流れの中で
公務員になった方が、それ以外の何かになってしまうのは、恐ろしいことであるようだ。
会ってきた方々の多くは、全般的に、「民営化」「法人化」など、不安げに響くようである。
しかし、実際にある時期以降、我が国全体として「行財政改革」が着実に進んでいる。
まず、平成不況下で行財政改革が進み、医療界においては21世紀の小泉行革に前後して、「国立病院の立ち枯れ作戦」で始まった。
250近くあった国立病院の施設を統廃合して、委譲や廃止で150以下にしたのだ。
僕も昔から、委譲された元国立病院に関わる機会があり、最近も民営化した元国立病院で仕事をする機会があった。
そして国立病院の次は、やはり小泉行革の目玉「平成の市町村大合併」の旗印のもとで、「公立病院改革の時代」が始まった。
10年近くの間に、1000あった公立病院のうち20%以上が経営形態を変更したり、民間委譲されたりした。
この公立病院の動きについては、ここ数年は次の理由から、この辺りの大きな動きは少なくなってきているように思う。
(1)地方税収が比較的良好であったこと
(2)自治体の財政健全化基準が緩和されたこと
(3)真に脆弱な公立病院の改革は完了していること
しかし、地方を中心にコロナ不況が忍び寄る中で、また経営合理化の機運が高まっていくのでは、という気がしている。
(2)公共と民間の間で、息を吹き返す人たち
と、好きにいろいろ書いたが。
最後に書いた民営化などの話は、確か公務員の皆さんに忌避されやすいパートだ。
しかし、実は法人化や民営化の後の病院事務局には、本庁を離れて病院に残り、イキイキと働く人たちが、意外に多くいる。
僕もかつて事務局にいた顔見知りの職員さんが、法人化した病院に移動した後に、あまりに元気になっていて驚いたことがある。
またある公立病院では、いくら事務局が頑張っても業績が好転しなかったのだが。
「半分民営化」したところ、急に結果が出はじめて、それとともに事務局が明るいムードに大変貌していった。
単純に安定した公共の中にいた時より、「医療の質を上げる、業績を向上させる」という目的意識が、活力になっているようだ。
僕は、特に民営化論者というわけではない。
ただ、公務員の皆さんが、「議会」「行政ピラミッド」「市民の目」にがんじがらめにされて苦しむ姿を、たくさん見てきた。
公共の皆さんには、安定と引き5換えにはなるが、楽しい民間人の世界もあることを、教えて差し上げたくなることがある。
さて次回は、今度は民間病院の事務局について、書いてみようと思う。
岸野康之 拝(本日重量 85.4㎏(着衣) 2021年2月21日 89.3㎏(着衣))
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