税理士 岸野康之 事務所

医療機関専門
財務、経営、相続 アドバイザリー

医療コンサル(6)家計簿という会計

どのくらいの数の家庭が記録しているかは分からないが、「家計簿」、というものをつけている家庭がある。

この家計簿は、どんな機能を有していて、何の目的で作られているのか。

1 会計が持つ機能

会計が持つ機能というのは、実は、幾通りにも考えられる。

僕も会計について様々な実務・検証を行ってきているが、ここ数年は、会計の機能を「財務会計」「管理会計」の二種と前提して実務をしている。

後者の管理会計については、僕自身が縁あって「病院管理会計講座」を開催することがあるので、詳しくは別の機会に書いていきたい。

さて財務会計とは、簡単にいうと次の要件を満たすような会計である。

①過去の記録

②利害関係者への公表等が主目的

③法律や会計基準などで、作り方が定められている

例えば、最終的に適切な税務申告をするために組成している会計は、正に①~③の全てに該当する「財務会計」だ。

また税務署とは別に公認会計士監査、官庁などに提出するために作成するものも、「財務会計」である。

一方、管理会計とは次のようなものを言う。

①過去の記録から将来の「目標予算、収支目標」の策定を行う

②「目標達成のための」団体内の業績管理、共有、意思決定のために作成

③どこにも定められた作成方法はない(参考書はたくさん出ている)

予算書などはある意味での管理会計であるが、ただ予算書というと、多くの団体で「テキトーに作成している」か、「官庁的な消化予算を作成している」か、のいずれかである。

経営に生きる「目標予算」を作るには、過去財務の十分な分析を行い、その財務のもととなる現場の実情を把握していなければならない。

さらに予算を本部で作って「やれー」というだけで動くはずはなく、それを現場の長がいかに実践に向けるかというのが、管理会計の要諦である。

2 家計簿の機能と目的

基本的に、僕が知る家計簿の機能は「PL(損益計算書)・CF(資金繰り計算書)」だ。

<収入(給料)ー 経費(あらゆる支出)= 現金残高>

現金の増減を把握して、その上で現金の残高・住宅ローン残高等を点検する。

そして、子供の成長、介護開始による出費など、立体的な客観情勢も勘案して将来予測を立てる。

ドラマなどでは、その家計簿を見ながら

「今月の赤字だわ・・・ダンナの小遣い減らさなきゃ」

「どうしよう、娘は私立に行きたいと言っているし、学資ローンが必要かな」

「お義母さん、本気で同居なんてするの? だったらリフォーム資金の工面を・・・」

と、課題を抽出して、それに対する対策を立案し、達成可能な予算目標を策定していく。

そう、家計簿の機能は、上記1の二つの会計でいえば、「管理会計の機能」なのである

家計簿は、税務署にも銀行にも出さない(出すものの元となることはある)し、作成方法や基準など何もない。

しかし、世の中の財務会計による企業など団体の帳簿記録より、よほど実務的な目的にフォーカスして作られている。

家計の維持、家族の発展という目的(ミッション)を達成するための管理ツール、予算執行ツールとして作られるものだ

家計簿というと、のび太のお母さんの溜め息が聞こえてきそうなツールであるが。

実は、我々がビジネス上で最も参考にすべきツールであり、会計を戦略的に構築するつもりなら、ここから昨日と目的を考え始めるべきものでないだろうか。

岸野康之 拝


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