税理士 岸野康之 事務所

医療機関専門
財務、経営、相続 アドバイザリー

医療コンサル(4)ヒアリング

最近はコロナに関する真実の情報、五輪に関する諸情報が、ない交ぜになって流通している。

僕は何でもかんでも開けっ広げに議論すればいい、というものではないと思うし、日本人の島国的な慎み深さは嫌いではない。

しかし、このコロナ政策では生計を奪われ、生活の先行きが見えない人をたくさん生み出しているのだ。

コロナ、五輪に関しては慎みなどせず、もっと声を大にして、是々非々でジャンジャン議論すべきである。

さて、会計の世界に入って初めてのまとまった仕事は、北陸にある公立病院コンサルであった。

F井総研にいたという先輩に連れられ、「コンサルタント」と記された名刺を持ち、コンサル業務に着手した。

ここで、その後の職業人生の基礎となる様々な経験をしたのだが、もっとも印象深かったのが「ヒアリング」である。

先輩から、約500人超の職員のうち、200人近くの職員から「ヒアリング」を行うように命じられた。

医療機関など初めて触れるし、医師・看護師・ほかスタッフなどと、何を話して良いか分からない。

大変なムチャ振りであるが、とりあえずやってみることにした。

ヒアリングで、そんなにテクニカルな質問を投げたり、医療技術的な話を聞くわけではない。

「この病院のいいところと、悪いところはどこですか?」

「あそこに立っている銅像は、誰のものですか?」

「どこの大学から来ているのですか?ほかに行きたい病院はありましたか?」

と、とても日常的で簡単なことをお聞きする。

このヒアリングというのをやっていて面白い、と思ったのは、お相手があるゾーンに入ると、

全てあちらから、聞きたいことをお話してくださる」ことだ。

こちらから聞き倒して聞き出す、という方法だとたいがい「時間切れ」になり、聞きたいことは聞けずに終わる

お相手が、自分でいろいろお話したくなるための、環境整備を行うのが、我々のヒアリングである

最初の仕事からそういう核心に気付けたのは、先輩も大して経験がなく、僕に至っては「会計も医療も未経験」の完全ド素人だったからだと思う。

明らかな完全ド素人コンサルが、プロの医療従事者たちから様々な意見を聞ける、というのは面白い発見であった。

この北陸の病院でのコンサルは、実は僕が就職した税理士法人で、初めて入札で落とした案件だったらしい。

そこに、未熟な先輩と完全未経験の僕が送り出された案件で、そんなコンビが作った提出成果品は、とても残念な内容だった。

しかし、とにかくこのヒアリングというのは、何物にも代えがたい経験となった。

そしてその後、多くの病院コンサルやM&Aに従事する中で、1病院につき100人単位のヒアリングを、一人でこなしていけるようになった。

多くの方とヒアリングしていると、中には日頃の怒りをぶつけたり、僕の未熟やアラを責めたりする人も、当然いらっしゃる。

しかし、どれだけボコボコにされても、スケジューリングしたヒアリングは継続されていく。

空手でいう「百人組手」みたいなものだ。

ヒアリング業務で責められ続けて心が折れて、大手コンサル会社を退職する人もいるそうだ。

しかしヒアリングというのは、こちらが聞きたいことを「聞きにいく作業」でなく、「話していただく」作業だ。

怒りとか責めとかを含めて、お相手が口にしたあらゆる言葉の中に、「こちらが聞きたいこと」のヒントが詰まっている。

そしてみんな、話したいことを山ほどお持ちになっており、その話したいことの中に、たいてい僕らた聞きたいことも混じっている。

それはコンサル業務だけではない、相続の仕事でも、医療法人の経営会議でも、みんな同じことだ。

そのことが分かってからは、何を言われても、全てが情報の宝庫であると思えるようになった。

因みに、有名なコンサル会社メディヴァの代表・大石佳能子氏も、医療コンサルを始めるときに、大量のヒアリングから始めたと仰っていた。

それにより、最初から医療現場の知識の蓄積がはじめられた、とも仰っており、僕自身、その点についても上記の経験からとても得心がいった。

聞くこと、聞く力、ヒアリング。

ここに、あらゆるコンサルテーションの基礎があると、確信している。

岸野康之 拝


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