税理士 岸野康之 事務所

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医師と税金(7)所得控除シリーズ ④医療費控除

今更ながら、YouTubeというのは本当にすごいと思う。

僕は夕方以降に事務所で流す音楽を、YouTubeからよく拾っていて、大変便利している。

危ないのは、つい手が滑り、大食い動画などチラ見すると、はまり込んでしまう点だ。

しかも会議等がZOOM社会になってきているので、その流れでつい、ということもある。

さあ、仕事に集中だ。さて・・・

14 医療費控除

医療費控除は、確定申告すれば開業医でも勤務医でも、「医療費が10万円を超えたら」年間200万円まで控除を受けられる。

(医師ほど所得が高くない場合には、10万円未満でも使えることがある)

要件は、自分か、自分と同一生計の配偶者や親族のために1年間に支払った医療費である。細かいことは国税庁のURLを見てもらうとして、僕からは実際的に知っておいて欲しいことを、いくつかお知らせしたい。

(1)「支払った」金額が対象

令和2年12月末に救急で治療を受けて、令和3年1月5日に支払った分は、令和3年度分の確定申告(令和4年の春に提出する分)で申告する。

治療を受けた日でなく、支払をした日がいつか、で判断する

(2)自費診療でも対象になるものがある

よく「自費はダメ」と思っている方がいるが、自費診療でも医療費控除を受けられるものがある。

それは病気やけがなどによって、「医師の診察により」、その自費診療が必要であるとされるものだ。

典型的なものは歯科のインプラント治療で、高額であるが、オーソドックスなインプラントは医療費控除の対象となる

ただし、美容整形ほか病気等の治療などには関係ない自費診療は、対象にならない。

(3)介護保険系の支出

基本的に、国は「医療」というものを「介護」とは明確に区別している。

しかし医療費控除においては、数多くの介護保険サービスへの支払も、医療費控除の適用を受けることができる

介護保険サービスは多岐に亘り、中には控除の対象外のものもあるので、よく確認していただきたい。

(4)高額療養費や、医療保険で補填された部分は、控除対象にできない

これについては、心当たりがある人は、次に例示するルールを読んでいただきたい。

6月に骨折で入院    支払った医療費20万円  医療保険など受取り30万円

10月にインプラント  支払った医療費50万円  医療保険など受取り  0円

この場合の計算は、次のようになる。

・(20万円+50万円)-30万円 → 40万円が計算の対象  ではない。

・(20万円―30万円)=0円   残る50万円が計算の対象  となる。

つまり、「医療保険金(高額療養費)が出た分の診療費だけ控除できない」ので、同年中の他の治療の控除を受けられる場合がある。

(5)領収証等の関係

少し前までは、領収証を全部封筒で税務署に郵送などする、物理的に手間がかかる仕組みだった。

しかし、いまは集計結果を電子申告などで提出して、領収証等はしっかり手元保管してあればよい、という手軽な仕組みになっている。

最近はさらに、医療費の通知(保険機関などが発行)を添付すれば良いようにもなった。

とにかく便利になったのだが、複雑さを増した面もあるので、「本当にこれでいいのか」迷ったら、税務署や税理士に確認したほうがいい。

なお、必ず控除の対象にした医療費の領収証等は、5年間は保管しておいて欲しい。

(6)同一生計の親族の医療費

意外に見落としがちなのが、自分だけでなく家族、親族の分の医療費も、自分の医療費控除に加えることができる点だ。

扶養控除などと同様に、同居かどうかでなく「同じ生計かどうか」で判断するので、よく確認していただきたい。

【医療費控除関連の 国税庁URL】

・医療費控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

・医療費控除の対象となるもの

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm

・医療費控除の対象になる介護保険サービスなど

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/010131/01/03.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1125.htm

とにかく、医療費控除の書籍が出ているくらい、医療費控除は奥が深く複雑である。

毎年の確定申告を通して、慣れていただき、また専門家に聞いたり良く調べたりするようにして欲しい。

次回は最後、「寄付金控除」とその関連の内容に触れていく。

岸野康之 拝(本日重量  86.5㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))


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