請い願わくば 天を目指さん
「歩みて 天に達せずとも 請い願わくば 天を目指さん」
これは僕の好きな言葉で、僭越ながら、座右の銘だ。
別に、覇者やラオウ(通称拳王・北斗の長兄)になりたいわけではない。
文字通り、歩いて天に行けないと分かってるが、それでも請い願い、天を目指したい気持ちを表している。
これは、税理士としてのあり方に、悩んだ時期に出会った言葉だ。
会社を辞めた後、何となく税理士試験を始めて。
2科目受かって、アルバイトしながらの受験になり。
さらに途中で、会計事務所の正社員となり受験を継続し。
32歳で試験合格、33歳で税理士登録したとき。
そこまで来たら、「ひと休みできるかな」と思っていた。
最上階や屋上に達したように、安心して過ごせるかと思っていた。
そうしたら。
さらに天に向かっていく、長い、先の見えない階段が伸びていた。
終りが見えない戦いが幕を開けた、そういう悲壮な実感だった。
そのときのクラクラした感じは、いまも覚えている。
仕事そのものは楽しく、毎日遅い時間まで、夢中で働いた。
でも、税理士としてどう生きて行くか、何を目指すのか、何も見えない。
1年くらい、長い階段の前で、ただ立ち尽くすばかりの時間帯が続いた。
そんな頃に、ANA飛行機内の機内誌「翼の王国」で、この言葉に目を奪われた。
「ああ、それでいいのか」
と素直に、ストンと腹に落ちた。
歩いて天に行くことはできない。
そう分かっていても、ただ天に向けて歩き続ければいいのか、と。
非常に情緒的な話だが、これで気持ちが開放された。
そして、力を解き放ち生きる、経営者たちに本気で寄り添うきっかけになった。
人には、心にハマる言葉というものが、それぞれにある。
僕の場合は、この言葉がハマった。
僕は本来、目標を持つことが不得手だ。
「人は誰でも 幸せ探す 旅人のようなもの」
by 銀河鉄道999主題歌
という放浪的精神への憧れがあり、どうも「1年後はこれ」という目標設定はあまり気乗りしない。
でも、この言葉一つで、天に向かうという 人生の目標=ベクトル ができた。
これができたら、業務上の目標設定もフィロソフィーの設定も、とてもラクになった。
身の程知らずでも、天を目指すという表現が、僕の心にとても合っていた。
別に、職業としての税理士が、僕が、天を取れるとは思わない。
ただ僕のお客さん、仲間、競合者たちの中には、本気で天を目指す人たちがたくさんいる。
そういう人たちに本気で寄り添い続けるために、この言葉の通り、天を目指そうと思う。
岸野康之 拝
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