病院の事務局 (2)公立病院 事務局の苦悩
僕は、数々の公立(都道府県・市町村立)病院にどっぷり入る中で、「何が事務局を苦しくさせるのか」を学んできた。
それは、だいたい次の5点に集約されるのでないか、と思うに至っている。
1 見下ろされる立場
地方に行けば行くほど、公務員そのものが地元の出世頭であり、地元ピラミッドの上層階級だ。
そして公務員は「年功序列」と呼ばれ、年齢や勤続年数で出世や給料が決まる、安定したピラミッド社会でもある。
ところが病院には、医師、看護師、薬剤師などを上位とした、通常の公務員社会と違う、異次元のピラミッドが存在する。
「医療資格のピラミッド社会」の中で、医療資格がない公務員である事務局員は、昨日までと逆の立場を味わうことになる。
医師たちに呼びつけられ、看護師たちに怒られ、市民(患者)の厳しい目線にさらされるという、想像しなかった展開に参ってしまう。
2 軽く見える責任
これまで、公立病院の組織改革に関わる中で、1,000人を超える医療職、事務職の人たちと、サシや少数でヒアリングを実施してきた。
その中で、多くの病院で医療職の皆さんが、口をそろえて次のように言う。
「医療行為の責任も業績の責任も、すべて自分(医療職)たちが負い、事務局は次の異動で帰るまで何もしない」
別に、人事異動に従って異動する事務局の皆さんが、何も悪いわけではない。
ただ、現場の医療人たちに「そう映ってしまう」ことが多いのは確かで、僕にもそう映ることは多い。
この意識や負担のギャップが、事務局にプレッシャーとしてのしかかってくるのである。
3 赤字は悪
役所というのは、一度決まった予算を適正に執行(キレイに使い切る)のが大切な社会だ。
役所の中では、黒字が善とか、赤字が悪とかいう考え方は、利益体質の民間人の発想だと考えられがちである。
予算不足になれば(怒られながら)補正予算を編成すれば済む、というところがあるし。
逆に予算が余ると、財政課や他部署から、見通しの甘さを指摘される社会でもある。
ところが病院というのは、公立病院でも民間病院でも「基本的に赤字は悪」で、一応収益性が問われる。
診療報酬を稼いでその中で経営してくれ、というごく当たり前の話なのだ。
が、これが公共の方々は慣れない。
しかも、黒字の公立病院など稀な存在で、たいてい赤字だ。
にも関わらず、知事や市長、議会などは病院の赤字を見ると、「事務局は何をしているのか!」と責め立てるのである。
そして事務局員たちは、「なぜ赤字か」の原因分析(言い訳)の書類を、山ほど作成することとなる。
その結果、次に・・・
と、残る2項目は時間の関係で、また明日書いてみることにしたい。
岸野康之 拝(本日重量 85.0㎏(着衣) 2021年2月21日 89.3㎏(着衣))
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