医療コンサル(8)マッピングと地域動線の分析
病院の世界に入って3件目の自治体病院コンサルの業務では、チームを組ませてもらった。
正確に言うと、出来っこない荒行を振られて泣きを入れたら、チームの組成を了解してくれたのだ。
元S友商事の腕利き商社マン・Y氏。
J/大学准教授・I氏。
N政策投資銀行・H氏。
よくこういうメンバーを集めてくれたと、(当時は恨みに思っていた)ボスには大変感謝している。
I氏、H氏とはまあ、いろいろアレだけれど、特に一緒に現場で格闘していただいたY氏との仕事は、いまでも大切な財産・思い出になっている。
Y氏は医薬品、医療機器の流通に強かったが、同時に「診療圏(商圏)分析」にめっぽう強かった。
その診療圏分析を、実際に何日もクルマに同乗して、一緒に実地でやらせてもらったのである。
まずコピーした地域の地図と、地域の病院・クリニックの固有データを用意。
それらを持ち、クルマでその医療機関現地に行く。
現地で医療法上の掲示物を確認して、情報と実際の異同を確認する。
そして重要なのは、そうしてクルマで回ったそばから、持参した地図に確認地点をプロットし、記録してくのである。
そうして蓄積したアナログな現場データを、デジタルで描き出した地図上に表現していくと、驚くほど、その医療機関が地域でどのような地理的役割をになっているかが、明らかになっている。
こういう一連の地図上の作業を、我々は「マッピング」と呼んでいる。
僕はここで基礎的・原始的なマッピングを学んでからというもの、自分の業務のため、お客さんのために、できる限りマッピングするようにしている。
例え分析上は必要なくても、成果品に入れなくても、だ。
前回、歴史を知ることで地域の皆さんとの共感性が生まれる、という話を書いたが、マッピングもやはり同様の効果がある。
僕は初めてマッピングをして、その威力を知って以来、全国のあちこちで地図を片手に、現地の仕事仲間と現地でマッピングするようになった。
マッピングを自らすると、いかに地方公共団体の行政上の位置と、地域医療機関というのがそれぞれ「無関係に存在している」ということがよく分かる。
自治体も可愛そうなもので、国から医療政策の全権限と責任を押し付けられているというのに、我が街にどんな病院があるかどうかは、一切選べないのだ。
その事実については、いくら議論をして報告書を読んでも、ピンとこない。
少なくとも地図上のレイアウトをしっかり見て、初めて我が街が、我が医療機関が、どこにあって何をすべきかということが見えてくる。
とかくコンサルテーションというと、財務とか法律とか、物事を解決してくれそうな理屈に依拠しがちだ。
しかし、人間はそれほど賢くないから、経験や記憶に訴えかける「歴史」、視覚や体感に訴えかける「マッピング」など、分かりやすいものから理解したほうが効率がいい。
そうして自分(たち)自身にしっかり見える化することで、次にどんな分析を進めるべきかということも分かってくる。
どの分野のコンサルテーションであっても、重要なポイントは、「可視化する」という点にあることは間違いない。
岸野康之 拝
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