税理士 岸野康之 事務所

医療機関専門
財務、経営、相続 アドバイザリー

医療と寄付金(2)受配者指定寄付金の概要

今日お邪魔した、クリニックの院長曰く。

「地域医師会から3月中に医療者向け、コロナワクチンの配布があると聞いた。

ところがそれが4月に延期になり、昨日は5月になると連絡があった」

とのこと。

「先生の地域はまだいい方です」と実感をお話したら、先生も「確かに、区部はもっと遅れているらしい」と。

この件については、医師会または地域単位で、順番や取りまとめの「精度差」がとてもある。

それもそのはずで、ワクチンが入る本数、アナフィラキシー症状以外の副反応など基礎情報が、あまりに不確かで流動的だから、当然の話だ。

しかし、だからといって真の供給状況や副反応の情報を出したら、単なる社会不安に陥るかも知れない。

そういう部分を含めて、コロナ禍は、現代の医療政策の基本的な難しさを浮き彫りにしている。

さて、今日の本題に入りたい。

1 指定寄付金とは

まず平易な言葉で、「指定寄付金」をおさらいしておこう。

(1)個人所得税の指定寄付金

公益性や緊急性が高い寄付で、財務大臣が指定したものをいい、この指定を受けた団体への寄付をした個人は、確定申告で「寄付金控除」を受けられる。

(2)法人税(会社などが行う寄付)の指定寄付金

普通は、法人が寄付をしても、ほとんど経費にならないと思って欲しい。

おカネを支出しても経費にならない、それが法人の寄付の「原則」である。

ただし、いくつかの「例外」がある。

①国や自治体への寄付金

②公益性や緊急性が高く、財務大臣が指定した「指定寄付金」

③NPOや私立学校などの公益的団体に支出する「特定寄附金」

このうち、③は一般の寄付金より、ちょっとだけ多く経費になる。

一方、①②は、全額が経費(損金という)になる。

当然、法人としては税負担を思えば、経費になる寄付金を支出したいわけなので、①②の寄付をしたい。

③や一般の寄付というと、たとえ業務上の必要があっても、及び腰になる。

そのようなわけで、指定寄付金とは、「ここは必要だから、税制優遇するから寄付してね」と、国が指定した寄付金のことを言う。

(実際には、財務省告示・・号 という形で多数定義されている)

【財務省告示の主なもの】

https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/110501/files/2012040600292/2012040600292_www_pref_kochi_lg_jp_uploaded_attachment_889.pdf

2 受配者指定寄付金の概要

ところで、主に文部科学省、厚生労働省など管轄の事業について、よく「受配者指定寄付金」というものが登場する。

これは簡単に言うと。

私学や民間でも、その事業が「真に公益的である」とお墨付きを得た事業であれば。

そこに寄付をした法人は、寄付金を全額経費(損金)にしていいよ、というものである。

(これを受けている寄付金は、個人も寄付金控除ができる)

全額が経費になるということであれば、寄付に積極的になる法人も出てくる。

(1)事業の実施主体

特定事業のために、多額の寄付を必要とする私立学校や社会福祉法人など

(2)配者指定寄付金を了承する(お墨付きを与える)団体

・私立学校などの場合「日本私立学校振興・共済事業団」

・社会福祉法人などの場合「共同募金会(赤い羽根)」

(3)審査

寄付をした者と受ける者が、特別の利害関係が無いことや、間違いなく必要な事業や建設に充てられることなどについて、上記②の団体の審査を通過して、初めてこの指定寄付金を募集することができる。

と、ここまでで既に長くなってきたので、今日はここまでにしたい。

私立学校への寄付は、医学部とつながりがある医療法人、医療機関にとって極めて重要な寄付金だ。

そして社会福祉法人の設立と運営に向けた寄付は、民間医療機関によるグループ内地域包括ケア体制構築のための、重要な要素となる。

次回は、その私立学校と社会福祉法人について、受配者指定寄付金の実務経験を踏まえて、お話したい。

岸野康之 拝(本日重量  86.5㎏(着衣)  2021年2月21日 89.3㎏(着衣))


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