医療と寄付金(1)医療機関と、身近な寄付金
緊急事態宣言が解除されるとの報道が出ている。
(まだ、分からぬが)
思えばこのコロナ期間、いろいろなことがあった。
改めて日本人は「自粛」で言うことを聞く、ということが分かった。
時の総理が、誰かの助言によって、全国に小さなマスクを送ってきた。
「密」という概念が誕生し、日常の発想が逆転した。
学校は再開したが、大学の再開は相当遅れた。
国内の移動は相当に制限、海外の渡航はさらに厳しくなった。
相当数の飲食店や観光業などが、苦境に陥った。
画面越しのビジネスが大きく展開され、通勤、移動の概念が変貌した。
まだまだ、あげればキリがないが。
これからタイムラグを経て、貨幣供給を急増させた世界経済の変化、補助金等でしのいできた事業者の苦境など、進んでいくように思う。
我々は、そういう次の動向を注視していかなければならない。
さて、今日から「医療と寄付金」について、書いてみる。
初回の今日は、身近な医療と寄付金について触れてみたい。
1 ふるさと納税の続き「ふるさと納税での公立病院支援」
さて、前回書いたように、ふるさと納税は通常の寄付金控除に比べて、大変お得な制度設計になっている。
ところでふるさと納税の中には、「返礼品が付いていない、ただ純粋な公共施設への寄付」というメニューもある。
例えばインターネットで「市民病院 寄付」などと検索すると、いくつかの病院が上がってくる。
それらの病院は、病院の医療機器購入などの寄付を募っているのだが、その寄付にふるさと納税の仕組みを使っている病院がいくつかある。
ある程度使途が決まっている病院が多いので、かつて入院した病院などへのお礼で、という人は、2000円程度の僅かな負担で、万単位の寄付をすることができる。
ただ病院のホームページ等を読んだだけでは、「どの制度の寄付金が適用されるか」分からない人も多いと思うので、関心がある方は、当事務所のお問合せページからご連絡をいただきたい。
2 日赤をはじめ、公的病院への寄付など
日本赤十字社はいわゆる公共団体ではないが、税法上の「特定公益増進法人」であったり公益法人のジャンルに属したりする、公的な団体だ。
日本赤十字社の寄付金は、非常によく見かけるが、他にもそういう公的な医療機関はたくさんあり、それなりの税制優遇がある。
なお、「公的な病院の範囲」が知りたい方は、当事務所のお問合せページからご連絡をいただきたい。
ところで、そうした団体への寄付については、主に次の態様がある。
(1)個人として
個人として公的な病院に寄付をした場合は、通常の寄付金控除を受けることができる。
(2)個人の相続や遺贈に伴う寄付
それから相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに、国等や公的な団体に寄付した場合には、その寄付した財産については、相続税の課税財産にならない。
つまり、相続税の負担が軽減されるのである。
このテーマは、富裕層の相続の仕事をする者にとって、重要テーマの一つである。
(3)法人として
法人(会社とか医療法人)が行う寄付というのは、税制上あまり有利に取り扱われない。
しかし、公立病院のような国・自治体の団体への寄付額は、全額が経費(損金)になる。
そして公的な団体への寄付は、全額経費とはならないが、経費に入れてよい割合が、普通の寄付金より少し高い。
また細かいことだが、4月~9月に行う日赤への寄付で一定のものは、上記の「全額が経費(損金)になる」取扱いがあるので、検討される法人は日赤に問い合わせていただきたい。
3 学校への寄付、身内がいる場合の注意
よく医学部出身者や、子供が医学部に入学した場合などに、私立の学校法人などから寄付を求められることがある。
しかし子弟の入学に際して支出した寄附金は、寄付金控除の対象にならないので注意が必要だ。
また、その学校向けの寄付を、自らの医療法人などから寄付金として支出する場合があるが、この寄付は経費として認められない可能性が高い。
認められないだけでなく、「給与課税」という形で、税務上の更なるペナルティが発生することもある。
理由は、それは理事長の個人的事情による支出であって、業務上の何にも関係しないとみなされるためである。
僕は駆け出しの頃、その辺りの扱いが分からずに理事長に「いいですよ」と述べた後、先輩に指摘を受けて、理事長に謝罪しに行ったことがある。
寄付というのは、医療や税金を扱う仕事をしていると、どこまでもついて回ってくる。
法人の税務などしていると、「寄付」と聞くと少し警戒心が湧いてくるものだ。
次回以降、だんだん医療界のマニアックな寄付について触れていきたい。
岸野康之 拝(本日重量 86.7㎏(着衣) 2021年2月21日 89.3㎏(着衣))
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