税務調査(2)イタイ初立ち合い
僕は30歳で初めて会計事務所に入ったとき、税務調査が何かも知らないし、自分の確定申告もしたことがなかった。
そして、いまにして思うと、最初の頃は
「税務調査で、やってはいけないこと〇選」
に該当するような、オイタばかりをやってきた。
関係ないが、そういう人間にぶっつけ本番で業務機会を与えたボス。
そして、それでもその後、通うことを許してくださった当時のクライアントには、本当に感謝しかない。
今日は、初めての税務調査立ち合いについて、書きたいと思う。
今、振り返ると笑ってしまうけど、これはもう、オイタどころではない。
入社2、3年目で医療コンサルの実務にばかりかまけて、税務案件がわずかしかなかった頃に。
実務ではまともな修業をせず、誰からも学んでいない状態で、税務調査の連絡があった。
当時、税理士試験は4科目受かっていたから、一応、税務会計の理屈は分かる。
しかし、税務調査で何をして良いかなど、さっぱり分からない。
当時はいろいろな成り行きで、先輩(と呼ばれる人たち)とまったく実務でリンクする状況になく、一人で行くこととなった。
結論としては、もうボコボコで、何一つまともな反論ができないヒドイ調査になったのだが。
その中でも際立ってヒドイのが、見よう見まねで作った自分の申告書が、誤りだらけであったこと。
そして、帳簿の記帳までが誤りだらけで、仕訳も決算整理も間違いだらけだったこと。
そのときに、調査官が言った言葉が、いまも耳を離れない。
「誰からも、ちゃんと実務を教わってきていないんだね」
そして、そう言ってから、誤っていた処理について、一つ一つを懇切丁寧に教えてくれた。
さらにそのとき、「未収金計上の実務的な考え方」なんて、奥行きのあることまで教えてくれた。
駆け出しとはいえ、税務調査に際して調査官に記帳指導を受けるという、絵的には、あまりにも情けない状況だ。
でも、初めて実務をちゃんと指導する人間が現れたと思ったのか、不思議と夢中で言うことを聞いた。
彼は、全然、出世街道にはない調査官だったと思うが、話は大変上手だった。
さて、結局いろいろと、否認された調査だった。
何が誤っているかも、よく分からないうちに、調査が終わってしまった。
そして「なんだか、いろいろ教えてくれて優しい調査官だったな~」なんて呑気にしていたら。
いつの間にか、納税者が「もうしません」の念書を入れさせられていた。
少し後でわかったけど、これこそ「やっちゃいけない、税務調査あるある」の代表選手だ 爆
必要以上に優しくされているうちに、うだつが上がらない調査官に、全部持っていかれてしまったのである。
このときのクライアントは、当時、父親から事業を引き継いだばかりの二代目の方で。
彼もまた経験が浅いので、僕のポンコツぶりが、良く理解できなかったようだった。
かなり経ってから、その二代目の方には、僕の当時のポンコツぶりを解説する機会があって、大いに笑ってくださった。
当時はサラリーマン受験生、税務実務を全然せずに、なぜか医療コンサル案件をいくつも抱えた、無茶苦茶な状況だった。
この調査の後あたり、「普通の会計事務所に転職して、一からしっかり修業しよう」と決めたのだが。
いろいろな巡り合わせで、結局、その事務所に居留まったまま実務を続け、いくつもの修羅場を経験していくこととなる。
次もまた、その辺りの話を書いてみようと思う。
岸野康之 拝
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