病院の事務局(1)公務員人事と公立病院
最初に書いておくが、熱心で能力ある公立病院事務局はたくさんあるし、僕も病院で素晴らしい行政マンたちに、たくさん出会ってきた。
さて、以前、病床300床程度の市立病院に通いはじめた頃のことである。
総務・経理担当の事務局に案内されて、中に入ってみると。
総務課員、経理課員として働いている人のうち、半分以上の人の「目の焦点」が少しおかしい感じがする。
覇気も意欲も、全く感じられず、生命感に乏しい人の群れのように見えた。
しかし実は、この感じは初めてではない。何度か経験している・・・
1 公務員の人事
そう、試験合格して地方公務員として入庁した皆さんにとって、「どこに配置されるか」は重要な問題である。
公務員の人事というのは、様々な例外はあるようだが、通常は2年に一度くらいの頻度で配置換えがある。
我々がイメージしやすいのは、住民票や印鑑証明を取るような「役所の窓口」だ。
しかし役所の仕事というのは、目に見える窓口仕事以外にも、デスクワークや現場作業など、本当に多岐にわたる。
昨日まで印鑑証明を発行していた人が、翌日からごみ処理場の伝票整理になったり。
支局の固定資産税班で電話連絡担当をしていたら、次は市長の秘書課に配属されたり。
皆さんの話を聞いていると、異動前後の配置に、全く脈絡がない場合が多いようだ。
もちろん愛する街のため、社会正義のために就職された諸氏らは、当然多い。
一方で「安定した処遇」を第一義に、公務員の道を選んだ人もまた、非常に多い。
ともかく、できればイキイキ働ける部署が、悪くても我慢できる部署に配置されたい。
2 病院事務局という配置
繰り返し書いておくが、熱心で能力ある公立病院事務局はたくさんあるし、僕も病院で素晴らしい行政マンたちに、たくさん出会ってきた。
ただ、病院への異動は「残念」と位置付けられている自治体はやはり多く、僕は現場での触れ合いで、よくそれを体感してきた。
昔通ったある公立病院では、病院の中心にいるべき事務局三人組が、常に気配を消している。
打ち合わせが終ると、フワッと三人とも姿が見えなくなり、医療者たちも事務局の動きが読めないという、不思議な状況だ。
なぜ、そんなことになっているのか、だんだん打ち解けてきて、よく分かった。
とにかく病院にいるだけで苦痛で、「早く本庁に戻りたい」一心で生活している、というのである。
医療者と顔を合わせたくないから、事務室から外に出るのは必要最低限の動きだけ。
病院に配置された彼らは、本庁に戻る日まで耐えるべく、よく三人で酒場で励まし合っていたそうだ。
僕はこの病院に、「組織改革をしてきなさい」と、送り込まれたのだが。
この三人組にしてみたら、改革などして人事慣行が変わり、本庁帰還が延びるのが一番の恐怖だ。
結局、彼らは経営改革に大反対をし続けて、経営が悪化しきった頃に、本庁に帰っていった。
こんな公立病院の事務局風景が、あちこちにあるわけだが。
いったいなぜ、公立病院の事務局がつらいのか。
次回は、少し掘り下げてみたいと思う。
岸野康之 拝(本日重量 86.1㎏(着衣) 2021年2月21日 89.3㎏(着衣))
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